第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
「日番谷……隊長……申し訳、ありません……!」
「……あぁ。無事で良かった」
気の利いた言葉を掛けることができずにそう返すと、彼は震える声で続ける。
「よ……四席は……?」
「…………」
日番谷の沈黙を肯定と察した彼は、声を押し殺して涙を流した。
「お、俺たちが……俺たちが、弱かったから……俺たちのせいで、四席が……ッ」
四席は、小さな事柄に捕らわれないさっぱりとした性格で、面倒見がよく、他の隊士から慕われていた。
確執のある隊士はなく、中でも特に仲が良かったのが詞織だ。
同期ということもあるのだろう。
詞織の持つ危うさには、彼女も気づいていたのかもしれない。
「……例の虚の討伐に、日生が向かった。敵はどんな能力を持ってる?」
日番谷の言葉に「日生三席が?」と言って、彼は息を呑んだ。
「危険です! ヤツは、ただの中級大虚(アジューカス)じゃない! 人の心の闇や恐怖を具現化してきます! だから、俺たち……上手く戦えなくて……」
「人の心の闇……?」
――「わたしは嫌いです……昔のわたしが」
日番谷は翡翠の瞳を見開き、断りを入れることも忘れて部屋を出た。
四番隊舎を飛び出し、自分の霊圧で足場を作って空を駆ける。
逸る気持ちをどうにか押さえ込もうとするが、バクバクと暴れる心臓を宥めることはできなかった。
死神の歩法である『瞬歩(しゅんぽ)』を使い、風よりも早く走る。