• テキストサイズ

たとえば、キミを愛する倖せ【短・中編集】

第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】


「暁天光臨(ぎょうてんこうりん)――『暁雨(ぎょうう)』」


 炎の矢が、空気を引き裂くように虚に降り注ぐ。

『グ、ぁ、アァア……ッ』

「これで終わりだと思わないで」

 詞織は弓を真ん中で二つに割り、二振りの剣へと変形させた。


「暁天光臨――『払暁(ふつぎょう)』!」


 払った紅黄金色の軌跡が炎となって虚を呑み込む。
 呆気なく終わったことに、全く違和感がなかったわけではない。
 それでも、これで終わりだと思い、詞織は刀を弓の形へ戻した。
 そのとき――。

『ちょうシに乗ルなよ、小娘ガ……!』

 フッと虚を吞み込んでいた炎が唐突にかき消える。
 予想外ではあったが、詞織は遅れをとることなく弓を構え直した。

『わレの真のチカラ、見せてクレる!』

 そう言い終わるや否や、虚の大きな翼が広げられる。
 無残にも片翼となってしまった鋼の羽に、少女の姿が映った。


『《怖れヨ――わレは内なる汝ヲ映セし、真実二して虚実の鏡》――……』


 瞬きをした次の瞬間、詞織の頭が真っ白になる。
 そして、たった一つの感情が、少女の心を黒く塗り潰した。

* * *

「日番谷隊長! 十番隊の方が、目を……!」

 ちょうど四番隊舎を出ようとして、四番隊の隊士が日番谷を呼び止めた。

 最後まで聞く必要などない。
 四席に守られた隊士の一人が目を覚ましたのだと分かり、日番谷は短く「案内しろ」と命じた。

 彼らの病室へ急ぎ、扉を開ける。

「あまり長時間は話せません。できるだけ、手短に」

「分かった」

 案内した隊士をその場に残し、日番谷は室内に入る。
 並んだベッドの一つに近づくと、身体中を包帯で巻かれた男性の死神が、ノロノロと日番谷に視線を向けた。
/ 196ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp