第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
「……すみません……手は尽くしたんですが、ここに着いたときには、もう……。ご一緒だった他の隊士の皆さんは、別室で治療中です。まだ意識は戻りませんが……どうにか一命は取り留めました」
「あぁ、よくやってくれた。充分だ」
四席たちは、西流魂街に突如現れた虚の調査と討伐の任務の最中だった。
相手は互いを喰い合った数百の虚の集合体である『大虚(メノス・グランデ)』の中でも、強い自我を持った『最下級大虚(ギリアン)』の個体が他の最下級大虚(ギリアン)を喰らい続けることで進化した虚――『中級大虚(アジューカス)』。
高い知能を持ち、身体の大きさ自体は並みの虚と変わらないが、並みの虚より遥かに高い戦闘能力を持つ最下級大虚(ギリアン)の、さらに数倍の強さを持っている。
また、西流魂街に現れた虚の能力は不明。
だからこそ、こちらもそれ相応の対応ができるよう、高い実力を持つ隊士を派遣した。
日番谷はグッと拳を握りしめる。
四席は他の隊士たちを逃がし、虚に深手を負わせた。
自分の命を盾にして、仲間を守ったのだ。
立ち止まるな、考えろ。
生き残った隊士たちはまだ意識を取り戻していない。
情報はほぼゼロだ。
しかし、虚も深手を負っている。
すぐに行動を再開することは――……。
「わたしが行きます」
決して大きな声ではなかったが、その声は妙に響いた。
日番谷が何か言おうと口を開くより早く、詞織は畳みかけるように続ける。
「彼女はわたしにとって姉のような存在でした。彼女を殺した虚を、わたしは赦せません」
「許可できない。私情で動けば、次に死ぬのは手前ェだ」
だったら、と彼女は赤みの強い金色の瞳を日番谷に向けた。