第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
「お前は何でも一人で抱え込み過ぎだ。もっと肩の力を抜け。人を頼ることを覚えろ。それは『負け』なんかじゃねぇ。『負けないために、人に頼るんだ』」
どこまでも不器用で、どこまでも孤独で。
誰よりも負けず嫌いで、誰よりも強くあろうとし、誰よりも弱い……そんな少女の力になりたい。
「もし誰にも頼れないなら、俺を呼べばいい。『助けて』って一言 言や、俺はいつだって力を貸してやる」
手を差し出す。
自分がどんな表情をしているのか、分からなかった。
けれど、一つだけ分かったことがある。
詞織が、差し出された日番谷の手を取る。
その手は思ったよりも頼りなく、自分の手よりも小さかった。
「あ」
引き上げるのと同時に、詞織が小さく声を上げる。
「どうした?」
尋ねれば、少女は「いえ」と小さく呟いた。
「ただ、日番谷隊長の手、思ったよりも温かったので……意外でした」
日番谷の扱う斬魄刀は『氷雪系』最強と謳われている。
日番谷自身も体温はそれほど高くないし、暑さにも弱い。
それでも、生きていれば当然、熱を帯びていないわけではない。
まじまじと日番谷の手に触れる少女の手を、逆に掴んでやる。
驚いたように目を丸くする詞織の手は、普通より温かく思えた。
「……帰るぞ」
手は、離さない。
……一つだけ、分かったことがある。
彼女が『勝てない』と思うは、自分だけでいい。
彼女が一番最初に頼るのは、自分だけでいい。
彼女の弱さを知っているのは、自分だけでいい。
彼女が最初に手を伸ばす相手は――自分だけでいい。