第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
「はぁ……今度、俺から十一番隊の連中には注意しておく」
「別にいいですよ。治療は四番隊の仕事ですから」
確かに、四番隊の主な仕事は隊士の治療ではあるが、「喧嘩で負傷したから治療に来い」とは、職務から明らかに逸脱している。
まぁ、ここまで来て何もせずに帰れというのも難だ。
そこで、花太郎は「あっ!」と声を上げた。
「日生さん、怪我してるじゃないですか!」
「……別に、大したことない。ほとんど打ち身と切り傷だけだし、すぐに治……」
「全然大丈夫じゃないじゃないですよ!」
座って下さい、と治療をしようとする花太郎を、詞織は頑なに「いらない!」と、いつも以上に強く拒んだ。
「日生、ついでだ。治療してもらえ」
「必要ありません」
「お前に休まれると、こっちが迷惑するんだ」
「このくらいで休みません」
梃子(てこ)でも動かないような頑なさに、日番谷は静かに詞織を呼び、微かに霊圧を上げる。
「日生。この程度のことで、わざわざ命令させるな」
ビクッと震えたのは、少女だけではなかった。
唇を悔しそうに噛んだ詞織は、ゆっくりとした動作でその場に腰を下ろす。
「世話を掛けるな」
「いえいえ。じゃあ、ちゃちゃっと済ませますね」
患部に手を翳し、花太郎は回道を掛け始めた。
「あ、やっぱり。骨にヒビが入ってますね。だいぶ痛かったんじゃないですか? 歩くのも辛かったでしょう?」
「何てことない。これくらい平気」
「いちいち強がるな」
日番谷がそう言えば、詞織はむぅっと頬を膨らませていじける。
その仕草はさすが、十番隊のマスコットと称されるだけあって可愛かった。