第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
柄の悪い男たちが、ガヤガヤと大きな声で話している。
正直、互いに話を理解できているのか謎だ。
だから。
さっき言っただろ。
何で聞いてないんだ。
果てには「テメェ、やんのかゴラァ!」と胸倉を掴む者もいる。
日番谷は大きなため息を吐きながら、十一番隊の隊舎にある日生 詞織の霊圧を探っていた。
ついでに、斑目にも話がある。
先ほど提出された書類に不備があったのだ。
わざわざ隊長がじきじきに出向くようなことではないが、仕事を早く終わらせたいのと同時に、ずっと執務室に篭りきりだから、外の空気を吸いたいという理由もあった。
隊舎の道場では、男たちのガヤガヤとした低い声が響いている。
あれから三時間は経っているが、まだ鍛錬と称して手合わせを続けているようだ。
「……っゃあ⁉︎」
ガンっと壁に激突する鈍い音が耳に届く。
道場の中は、十一番隊の隊士が壁を作っていて見ることができなかった。
しかし、先ほどの声は詞織のものだ。
「ふんっ、やっと終いか?」
声と内容から、相手をしているのは斑目で間違いないだろう。
隊士たちの向こう側で、少女の立ち上がる気配が伝わる。
疲労と痛みでフラフラとしながらも、歯を食いしばる姿が見える気がした。
元々、真央霊術院を卒業した詞織が第一に希望した配属先は、十一番隊だった。
けれど、「ガキと女はお呼びじゃねぇ」という理由で配属を拒否され、第二、第三希望の「どこでも」という希望通り、真面目そうな雰囲気から十番隊へと配属が決まった。
その話を十一番隊でしたのかどうかは分からないが、「鍛錬」という名目で十一番隊の隊士に手合わせを申し込んだのは、詞織が席官になるより前の話。
今では、十一番隊の隊士に誘われて隊舎へ赴くことも多くなっていた。