• テキストサイズ

たとえば、キミを愛する倖せ【短・中編集】

第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】


「それでは、失礼します。松本副隊長、サボらずにちゃんと書類を処理して下さいね」

 乱菊の呼び方が「さん付け」から副隊長呼びに戻っている。
 丁寧に一礼をして、詞織がドアを閉めた。

 残った静寂の中で、松本が気の抜けたため息を吐く。
 そこへ、再び扉が開かれ、詞織が小さく顔を覗かせた。

「どうした?」

 忘れ物か、と声を掛ければ、少女は日番谷の机の上に小さくラッピングされたものを、ちょこんと置く。

「甘納豆です。お好きだと聞いたので」

「あ、あぁ……ありがとう」

「いえ……お世話になっていますから」

 サッと俯いた詞織の耳は、礼を言われたことに気恥しさを覚えたのか、微かに赤く染まっていた。

「詞織、アタシのは?」

「……じゃあ、これを」

 松本の机にコロコロと色とりどりの金平糖が転がる。

「……これ……もしかして……」

「常備している金平糖です」

 日番谷とのあまりの差に、松本はあからさまに落胆して唇を尖らせた。

「ちょっと、隊長に贔屓しすぎじゃない?」

「そうですか?」

「そうよ。わざわざ差し入れなんて」

「もういいから。お前は黙って書類を片づけろ」

「はぁ〜い……」

 やる気のない副官を叱咤すると、詞織も邪魔にならないように、とドアに手を掛ける。

「『乱菊さん』」

「ん?」

 松本が顔を上げると、詞織は微かに笑みを浮かべた。

「餡蜜、今度連れて行って下さいね」

 きゅぅぅん、という音が聞こえた気がする。
 その笑顔の破壊力は凄まじく、日番谷すら胸を切なく締めつけられた。
 顔に集まる熱を、頭を振ることでどうにかやり過ごす。

 パタンと今度こそドアが閉まった。

「見ました、隊長! 何ですか、あの可愛い生き物!」

「うるせぇ! さっさと書類を終わらせろ!」

* * *

/ 196ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp