第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
――尸魂界(ソウル・ソサエティ)。
それは、現世で死んだ生物が行きつく、死後の世界。
――死神。
それは、尸魂界と現世にある魂魄の量を均等に保つ役目を持った、調整者。
護廷十三隊の十番隊、それを統括する隊長は、史上最年少でその席についたことから、『神童』と呼ばれる少年だ。
銀色の髪に翡翠の瞳を飾る、十歳前後ほどの外見の少年は、その日も執務室で書類仕事をこなしていた。
不機嫌そうに眉が寄せられているが、それが少年の常であることを誰もが知っている。
副隊長の席には、ウェーブのかかった明るい髪色の、グラマラスな女性が座っていた。
口元のホクロが、なんとも妖艶な雰囲気を醸し出しているが……。
「あぁー! もう! 全然終わんなーい‼」
副隊長が嘆きの叫びを上げると、少年の眉間のシワはさらに深まり、青筋が立った。
「昨日も今日も書類、書類、書類……飽きた! 買い物行きたい! 甘いもの食べたい! お酒呑みたーい!」
「松本……テメェがサボらずやってれば、そんな山になってねぇんだよ」
「日番谷隊長、ヒドイです! サボってるんじゃなくて、息抜きしてるんですよ!」
「誰がどう見ても、テメェのは『息抜き』なんてレベルじゃねぇ」
十番隊の隊長である日番谷冬獅郎は真面目で厳格。
逆に副隊長の松本乱菊は、面倒見はいいがサボり魔。
そんな真逆の二人が統率している十番隊だが、日番谷の指導が行き届いている為か、真面目な隊員が多かった。
「黙ってサッサとやれ。テメェが溜めてるせいで、こっちも終わらねぇだろうが」
基本的に、隊長と副隊長が目を通さなければならない書類は、先に副隊長から回される。
つまり、隊長である日番谷が処理しなければならない書類も、松本がサボるせいで、一部滞ってしまっているものがあるのだ。
「はぁい……」