第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「辛い目に遭ってきたのに、誰も責めない優しいところが好き。知らない人の為に身体を張れるところが好き。自分より強そうなヤツに立ち向かう強いところが好き。自分のことを認められない、自信を持てない弱いところが好き」
「や、止めて下さい……っ」
一つ上げていくたびに、自分の中で理性を縛る鎖が壊れていく気がした。
恥ずかしくなったのか、彼女が腕の中で身をよじる。
だから、黄瀬は抱きしめる力を強くした。
彼女を逃がさないように。
「食べるときに髪の毛束ねる気遣いが好き。勉強、スッゲー分かりやすかった。言葉遣いとか仕草がスッゲー綺麗。背筋が伸びて凛としたところがカッコイイ。声もカワイイ。メシ食べてる姿もカワイイ。悲しそうな顔してたら守ってあげたい」
「も、もういいから……っ」
分からせてやりたかった。
鴇坂 詞織がどれだけ魅力的な女の子なのかを。
分からせてやりたかった。
自分がどれだけ鴇坂 詞織を好きなのか。
二度と、勘違いなんて言わせないように。
「サラサラの髪に触りたい」
言いながら、黄瀬は彼女の滑らかな髪に指を通した。
「ちっちゃな身体を抱きしめたい……」
そう言いながら、少しだけ詞織を解放する。
そして……。
熟れた林檎のように顔を真っ赤にして、恥ずかしさで涙目になっている彼女の髪を小さな耳に掛け、耳元で囁いた。
「詞織っちにキスしたい……」
「……っ」
ビクッと小さな身体が震える。
もう、限界だった。
詞織を上向かせ、彼は身を屈める。
何をされるか悟ったのか、ギュッと目を瞑る彼女が、またたまらなくカワイイ。
ギュゥと締めつけられる胸に心地良さを覚えながら、黄瀬は彼女の唇に自分の唇を近づけた。