第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
鴇坂学園に着いた黄瀬は、そこで紗良と別れた。
あたしが行くより、アンタが一人で行った方がいい。
紗良は、やはり悔しそうにそう言った。
詞織がよく使っているという旧図書館の場所を教えてもらい、彼はそこへ急ぎ、待ち望んでいた彼女と会った。
学校指定のジャージに身を包んだ詞織を見て、黄瀬の胸は痛む。
思わず詞織を抱きしめたが、彼女はその腕から逃れるように解いた。
そして、まるで突き放すように、自虐の言葉を紡ぎ続ける。
その言葉の一つ一つが、彼女を傷つけてきたもので。
自分が家族より馬鹿だから、劣っているから。
それはもはや思い込みというレベルを超え、長い時間を掛けて彼女の中に刷り込まれたものだった。
「分かったでしょう? わたしはあなたが思っているような人間じゃない。完璧な人間でも、綺麗な人間でもない。ただの劣等感の塊。本当に、わたしは……」
それ以上は聞きたくなくて。
それ以上は自分を傷つけてほしくなくて。
さらに自分を傷つける言葉を吐き続ける詞織の頬を両手で包み、黄瀬は無理やり彼女を上向かせて視線を合わせた。
「それ以上言ったら、マジで怒るっスよ」
自分で思うよりも低い声が出る。