第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「承認欲求って分かります? 人から認められたいという感情のことです。わたしは家族より劣っているせいで、周囲から過小評価をされている。それは事実です」
自分より馬鹿なくせに、と思う気持ちはもうなくなった。
嗤われ続けてきて、それが当り前なように思えてきた。
嗤われて当たり前。
快音たちより馬鹿な自分は、周囲から嗤われて当然。
ずっと嗤われてきた詞織は、自分の存在価値を見失ってしまった。
だから、自分の価値を確かめたかった。
……これはわたしの、一番浅ましく、醜い部分。
「わたしが人を助けるのは、自分の価値を確かめるため。人から『ありがとう』と言ってもらって、わたしが存在することを認めてほしいから。『あなたのおかげで助かった』って、そう言ってほしいから。そんな身勝手な理由で、わたしは人を助けているの」
自分の承認欲求を満たすためだけの人助け。
「分かったでしょう? わたしはあなたが思っているような人間じゃない。完璧な人間でも、綺麗な人間でもない。ただの偽善者で、劣等感の塊」
これが、本当のわたし。
ほら、引いたでしょ? 嫌な人間でしょ?
わたしは、あなたが好きになるような女ではない。
だから……もう、ここから出て行って。
これ以上、踏み込んでこないで。
「本当に、わたしは……」
不意に、自虐の言葉を続けようとした詞織の頬が、大きな手のひらに包まれる。
グイッと上を向かされ、無理やりに視線を合わせられた。
「それ以上言ったら、マジで怒るっスよ」
* * *