第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「全部、ですか……」
同情しないで。
自分は、彼に好きでいてもらえるような人間じゃない。
詞織は黄瀬の腕から逃れ、彼を押しやった。
「紗良からどう聞いたの? わたしが可哀相だって、そう聞いたんですか? だとしたら、紗良の完全な思い違いです。わたしが受けているのは、正当な評価なんだから」
「そんなことないっしょ⁉ どう考えたって不当っスよ! 自分よりバカな連中からバカにされるなんて……っ」
「言ったはずです。中間考査で一位だった兄に対して、わたしは四位だった。わたしと快音の間に二人もいる。わたしは兄以外に二人の人間に負けているんです。嗤われて当然の結果でしょう?」
「評価される結果っスよ! 嗤われるなんておかしい‼」
「そういう場所なんです、わたしがいる場所は。特に、わたしと快音は双子。同じで当たり前なんだから……」
「――いい加減にしろよ‼」
突然怒鳴られて、詞織は言葉を吞み込んだ。
苛烈な琥珀色の瞳に射すくめられ、同時に魅せられる。
彼の熱い瞳と、息を呑むほど美しい表情に。
「詞織っちはバカにされていい人間じゃないっス。詞織っちみたいな人が、バカにされていいはずないんスよ」
胸の奥の熱が、ゆっくりと冷めていく。