第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
悪いことをしたとは思う。
だが、ジャージの女を連れていては、彼の評価を下げることに繋がるだろう。
仕方がない。
そう、自分を納得させた。
――『……好きっス……詞織っち』
彼の告白を思い出す。
断らなければ。
だが、断ったらもう会えなくなる。
それが、少しだけ寂しかった。
けれど、それは自分勝手だ。
――『昨日も不良やっつけて、さっきだっておばあさん助けてたじゃないスか!』
心が動きそうになっていた。
心に陰が差すたびに、明るく照らしてくれる。
そんな気がし始めていた。
けれど、彼は勘違いをしている。
きっと、善意で人を助けるお人よしだと思っている。
もしそれが好意的に映っているとしたら。
もしそれが、自分を好きな理由なら。
それは大きな勘違いだ。
シン…とした静寂が好きなのに、自分の呼吸しか聞こえない空間に寂しさを感じてしまう。
詞織は大きくため息を吐き、寂しさを誤魔化すために歌をうたった。