第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「話があるわ。ちょっと来なさい」
そう言って、彼女は外へ黄瀬を呼び出した。
体育館から出て少し歩き、紗良は足を止める。
「……で、話って何スか? もうすぐ休憩終わるんスけど」
「別に大したことじゃないけど。ただ、詞織から伝言があってね」
「伝言?」
「そ、伝言。今日は会えなくなったって」
「え? 何で? 急用スか?」
せっかく、会えると楽しみにしていたのに。
「さぁ? あたしは伝えてって頼まれただけだし」
「そっスか……けど、別に伝言頼まなくても、連絡してくれれば……」
「したくてもできないのよ。ケータイがパァになっちゃったから!」
腕を組み、紗良はどこか苛立たしげに指で腕を叩いている。
「パァって、水にでも落としたんスか?」
「ああ、もうっ! 詞織がそんな間抜けなことするわけないでしょっ⁉」
紗良は紙袋を外して声を荒げた。
荒く肩で息を吐く彼女は、今にでも飛び掛かってきそうなほどの勢いだ。
「詞織っちに何かあったんスか?」
そう尋ねると、紗良は悔しそうに眉根を寄せる。
ただならぬ気配に、黄瀬は彼女に詰め寄った。
「……コレと、何か関係あんじゃないスか?」
自分の携帯から呼び出した例の動画と、そこにあるコメントを見せる。
「それ……っ」
いつもと違う低い声音で問いかけると、その剣幕に怯んだが紗良が俯く。
そして、大きくため息を吐き、語り始めた。