第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「……あ、おい、これ」
不意に、森山が声を上げた。
動画をスクロールさせると、コメント欄に目が行く。
――この子、すごい!
――不良ザマァ!
――正義の武闘派美少女キター!
そんな、詞織を賞賛するコメントには続きがあった。
――この子、鴇坂学園高等部一年の鴇坂 詞織じゃん。
――鴇坂の凡才、不良撃退www
――凡才のくせに出しゃばりすぎ。そんなに目立ちたいワケ?
身体から血の気が引いていく。
自分の目を疑ったくらいだ。
他にも、彼女に対する罵詈雑言が並んでいた。
もう、目を逸らしてしまいたいほどに。
「ヒドイな、これ」
「おい、黄瀬。この子……」
そのとき、館内がざわついた。
もともとあった黄瀬のファンの歓声に、別の違うざわめきが混ざる。
ざわめきというよりは、どよめきか。
「なんだ、アレ?」
「何か、黄瀬の方を見てないか?」
紙袋をかぶって仁王立ちしている女子生徒は、間違いなく自分を見ている。
「更科サ……ッん⁉」
ツカツカと大股で歩いてきた紗良は、慌てて黄瀬の口を両手で塞いだ。
「(何するんスか、更科サン!)」
「(アンタ、こんなにファンがいるところで名前を呼ぶなんて、あたしを殺す気⁉)」
小声で責めてくる紗良に、ようやく彼女の行動に理解が追いつく。
「あ、そっか」
危ない危ない。