第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「えぇ~! マジで⁉ お前彼女できたの?」
「お、オマッ、えっ? かのっ⁉ えっ?」
女が苦手な笠松が、目に見えて赤面して狼狽え始める。
「まだっス。これから彼女になるんスよ」
フラれそうだけど。
うん。大丈夫。
フラせなければいいのだ。
「なに? モデル仲間とか? ファンが泣くんじゃない?」
「モデルじゃないっスけど、モデルよりカワイっス! 天使よりカワイっス! めっちゃ優しいし、めっちゃ強いし、めっちゃカワイっス!」
とにかく可愛いを連呼する。
だって可愛いんだもの。
黄瀬は携帯を持ってきて、昨日黒子に見せた写真を笠松たちに見せた。
「顔がぼやけてよく見えんな」
「ん~? この子どっかで…………あ」
そう声を上げた森山は自分の携帯を取り出す。
「どうした、森山?」
「うん。この前チラッと見た気がすんだよ、動画で」
黄瀬と笠松は、揃って森山の携帯を覗き込んだ。
「あ、これ、この前の……」
森山が携帯で出した動画には、不良を倒している詞織の姿が写っていた。
「すごいな、この合気道。初段くらいか?」
「笠松センパイ、分かるんスか? でも、詞織っちは習ってないって言ってたっスよ? 兄貴の見よう見真似だとか……」
「見よう見真似?」
「っていうか、笠松。武道とか分かんの?」
「知り合いに合気道をやってるヤツがいてな。でも、見よう見真似ってレベルじゃないと思うがな」
何かよく分からないが、やはり彼女はすごい人間なのだ。
何だか自分のことのように誇らしくなる。
自分は凡人だと話していたが、やはり詞織の思い違いだ。