第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「……はぁ……オレの何がダメなんスかね?」
「そんなことを聞かれても」
「オレ、女の子にアプローチしたことないんスよね」
「それは嫌味ですか? 自慢ですか?」
「フラれる前にどうにかしないと」
「残念な結果に終わらなければいいですね」
「……不吉なこと言ってないで、黒子っちもいい案出して!」
「どうして僕が黄瀬くんのために頭を使わないといけないのでしょう?」
結局、いい案は出なかった。
* * *
今日は詞織に会える。
朝一番で、会う約束を取りつけたのだ。
「どうしたんだ、黄瀬?」
部活の休憩中、海常バスケ部の主将である笠松 幸男が声を掛けてきた。
太い眉を持った、精悍な顔立ちの青年である。
何に対しても実直な熱血漢で、部員からの信頼も厚い。
「やけに機嫌がいいじゃないか。何か気持ち悪ぃぞ」
気持ち悪いとは失敬な。
だが、ご機嫌な自分は、そんなことで怒ったりしない。
「分かるっスか?」
気持ち悪いと言った笠松に、黄瀬は笑顔で答えた。
「何? 女の子絡み?」
「何でも女に絡ませるな、森山。調子がいいのは良いことだろう」
話に入ってきたのは、バスケ部の先輩である森山 由孝。
サラサラとした黒髪と切れ長の黒い瞳を持つイケメンだが、誰もが知っている。
彼が可愛い女の子が好きだが、ナンパが高確率で失敗する『残念なイケメン』であることを。
「男の機嫌が良くなるっていったら女だろ? それ以外に理由があんの?」
「そうっスよ、笠松センパイ。愛の前に男は強くなるっス」
「「え?」」
笠松と森山が変な顔をしてこちらを見てきた。