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たとえば、キミを愛する倖せ【短・中編集】

第1章 たとえば、君に名を呼ばれる倖せ【名探偵コナン/安室 透】


 食事を終えた四人は、飲み物のおかわりを注文し、会話を続けていた。

「そういえば、詞織さん。新曲、聴きましたよ!」

「私も聴きました! 今回の歌もすごく素敵で……!」

 そう興奮気味に話しているところへ、安室はタイミングよく飲み物を運ぶ。

「新曲……ということは、詞織さんは歌手活動を?」

 知っているくせに、すっとぼけて会話に参加すれば、蘭と園子は「しまった」と顔を見合わせた。

「気にしないで。他にお客さんもいないし」

 小さく笑う詞織に、二人は「すみません」と謝罪する。

「詞織お姉さん、歌手を目指してるの?」

「ううん。ただ、趣味で作った曲をインターネットに上げてるだけ。恥ずかしいから周りには秘密にしてるの」

「『DIVA』って名前で活動してて、不定期に二十枚限定で販売されるCDは、秒単位で即完売!」

「確か、『DIVA』の曲を毎日聴かないと、禁断症状が出ちゃう人もいるんですよね」

「それはデマだと思うけど」

 苦笑する詞織に、蘭たちは真剣な表情で首を振る。

「かなり信憑性の高い話だと思います!」

「詞織さんの曲を聴いて、感動しない人なんていませんよ!」

 三日前にベルモットが自動車で掛けたCD。
 確かに、そこから流れた歌声には、安室も心を揺さぶられた。
 一種の暴力のように、脳内を冒す至極の旋律。
 たかが歌ぐらいで禁断症状などありえない。
 普段の自分ならば、何をバカげたことをと思うだろうが。
 彼女に関して言えば、それもありえると思った。

 しばらくして、詞織は「課題があるから」と席を立つ。
 時計を見れば、詞織が来店して一時間半は経過していた。
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