第4章 春、ネコの玉転がし。
「アンナ!アンナ!俺、すぐにエースになって試合で活躍しまくるからな‼︎」
部活からの帰り道、そうリエーフは言った。
自己紹介、ポジションの確認、そして、バレー部用のジャージを注文するためのサイズ確認をして、今日は解散となった。
ジャージのサイズは私はMサイズ。
リエーフは特注…
どこをどうやっても丈が足りないのだ。
上も下も。
得意げな顔で私を笑うリエーフにイラつき、みんなから見えない場所で背中に手のひらを叩き込んだ。
帰る場所が一緒なので一緒の電車に乗り一緒の道を帰る。
帰りながら、お腹が空いたとごねるリエーフのためにコンビニに寄り、店外でリエーフを待てば、はい、と渡されるパックのミルクティーとホットスナックの袋。
「これ、好きだろ?」
かりゃあげくんを頬張りながら2つが入った袋を差し出すリエーフ。
袋を受け取り中の袋を開ければ、出てくるアメリカンドック。
アメリカンドックにかぶりつけばほんわりとした甘さが口の中に広がった。
「なあ、アンナ、一口ちょうだい?」
家の目の前、かりゃあげくんを食べきったからかリエーフは私におねだりをした。
ずるい。
私だってかりゃあげくん食べたかった。
「かりゃあげくん分けてくれないんだったらあげない。」
意地悪くそう言えばふくれっ面のリエーフ。
ぱくり、ぱくり、食べていれば自宅に到着。
今日は私達が一番早い帰宅らしい。
誰もいない自宅の鍵を開け、2人玄関に入ると後ろからばたりとドアが閉まる音がする。
ただいま、と誰もいない家の奥に声をかけ、ローファーを脱ぐ。
「アンナ。」
リエーフの声。
上がり框の上。
登ってそのまま振り向けば、夕日を背負ったリエーフ。
だらりと垂らした腕に触れる、骨ばった指。
指が触れ、絡まり、引かれる。
引かれるままに倒れ込めば、柔らかな指定のベストが頬に触れた。