第4章 春、ネコの玉転がし。
「バレーの醍醐味はスパイク?違うね!
相手のスパイクをドシャットすることだ!
なあ、灰羽弟想像してみろ。
コートの真ん中、ネット近く。
相手のエースが自信満々に打ったボールを自分が敵コートに叩き落とす。
エースが決めるって思ってたチームメイトは慌ててボールを取りに滑り込んで来るわけだ。
でも、ボールは床に落ちる。
ボールを取るため滑り込んできた敵が2人…
いや、3人か?
そいつらが自分の足元からお前の顔を睨むんだよ。
ものすごく悔しそうにな。
当然周りからは大声援。
どうだ?やってみたくなんねえ?」
にやにやと笑う黒尾。
そんな口車に乗せられてポジションチェンジするやついないって…
リエーフだってそんなアホの子じゃあないはず。
なんて思いながらリエーフを見ればそこには緑色の瞳をキラキラさせて黒尾を見るリエーフ。
「やります!ミドルブロッカー…?でしたっけ?
俺やりますっ!」
…むちゃくちゃはめられてるじゃん。
まんまと乗せられてるじゃん。
じゃあ決定なー、とホワイトボードに書かれた灰羽の名前。
その上にはミドルブロッカーの意味であるMBの文字。
にかり、と笑いながら私の方を見たリエーフ。
「アンナに格好良い姿いっぱい見せてやるから楽しみにしてろよ!」
得意げな顔をしながら、リエーフは耳のピアスをひとなでした。
リエーフは昔からこうだ。
いつでも自信満々。
運動と名の付くものは大体そつなくこなす。
…いや、こなせることがわかっているから自信満々なのだろうか…
いつでも自信満々な顔を私に向けてきた。
そんなところも…すき…なんだけど……
「まあ、精々頑張ってね。」
照れ隠しに、ふいとリエーフの反対側を向きアカを撫でる。
それを見たリエーフは頬を緩ませ、笑った。