第3章 春、お揃いとアイツ。
屋上から階段を下りながら、ふと昨日のことを思い出す。
「じゃあお揃いの何か付けようぜ?アンナ?」
そう提案してきたのはリエーフ。
お揃い、かあ。
ネックレスじゃあありきたり。
指輪はさすがにアウト。周りに勘付かれる。
他にお揃いだって気づかれないアクセサリーか…
何がいいかと悩んでいると、リエーフはにやりと笑い私の部屋から出て言った。
ばたばた、がさがさ。
騒がしい音が聞こえたと思った矢先、ばたんっとドアが閉まる音がして、リエーフはまた私の部屋に戻ってきた。
「これは?」
見せてきたのは買ったまま開封していないピアッサーと数種類のシンプルなピアス。
「ねえ、レーヴォチカ…?これ、あけるの?」
そう問えば、リエーフはくすり、笑う。
「もしかして…怖い?」
いつもと違う大人びた笑みに、心臓が跳ねる。
たまに、この子は本当に私より年下なのかと思ってしまう時がある。
ふい、と顔をそらし、怖くないと否定を吐くと私の方に伸びてくる腕。
ひょいっと持ち上げられると、私はリエーフの膝の中に収まった。
「俺が開けてあげる。」
耳を隠す私の髪を長い指で耳にかけ、耳たぶにそっと触れるリエーフ。
「これでピアスをつける時、必ず俺を思い出す。」
指先で私の薄い耳たぶを触りながらふ、と耳に息を吹き込まれ、ぞくり、背中が泡立った。
ずるい。
ずるくて、好き。
そんな風に言われたら開けないなんて選択肢、ないじゃない。
「じゃあ、ファーストピアスの色はレーヴォチカが決めて?」
耳に触れた手に被せるように自分の手を重ね、その手のひらに唇を触れさせる。
「私のものになってくれるのなら。」
私で貴方を縛ってあげる。
だから貴方も私を縛って?
ピアスという”傷跡”で
ばちん、と開いた好きの証。
2人の耳に光るのは血の赤。
赤く色付いた互いの耳に
私達は唇を寄せた。