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言えない”スキ”の伝え方【HQ】

第3章 春、お揃いとアイツ。


side黒尾

「私、好きな人がいるの。」

目の前の好きな奴は俺の目を見つめそう言った。

「ずっとずっと好きで、きっと私、その人以外好きになれないと思う。
それくらい好き。」

す、と外された視線はそいつを思い出しているのか柔らかく緩む。

誰だ。
それは俺が知っている奴か。

聞こうとしてやめた。
灰羽は外していた視線をあげ俺を見る。
そして右手の人差し指を立て、とん、と唇に当てたから。

「秘密。」

それでなんとなくわかった。
灰羽が好きなのはあの弟だって。


言いたくても言えない恋…ってやつか。


「わかった。」

言いたかった言葉を飲み込み、小さく笑う。
伸ばした手を頭に乗せるとそっと撫でた。

「あ、そうだ黒尾。リエーフ、バレー部入るって。」

「へーそうか……は?」

言われたことが一瞬理解できず疑問形で問えば、聞いてなかったことを怒るように、だーかーらーと突っかかって来る。

「弟のリエーフがバレー部に入部したいって!」

ああ、そういやあ昨日言ったような気がする。
弟をバレー部に入部させたいって。
でもそれは弟を通じて灰羽に練習やら試合を見にきて欲しかったという俺の勝手な願い。

1番頑張っている姿が視界に入れば俺のこと少しは気にしてくれるかな、なんて思ったけれど…

まあ、身長が高いやつが入ればバレーは有利になる。
特に高身長はミドルブロッカーには最適だ。

それに、憂さ晴らしにシゴいてやれるし。
まあ冗談だけど…

「じゃあさ、放課後見学来いって言っておいてくれねーか?
どのくらいの実力かみたいからさ。」

「わかった。言っておく。」

先に行くね?
そう言って灰羽は屋上から出て行く。
ぱたり、扉が閉まって1人になった瞬間その場にへたり込んだ。






「クロ…凹みすぎ。見ててうざい。」
「だったら見てんじゃねーよ研磨。」

屋上の死角からのろりと現れた幼馴染の研磨に毒づくと、俺は勢いをつけて立ち上がり乱暴に屋上の扉を開けた。

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