Blutigen Flügeln(進撃の巨人:アルミン夢)
第1章 Blutigen Flügeln
「そうなんだ。そうか、そうよね。やっぱりアルミンは頭が良くて羨ましいわ」
「そんな事ないよ。実際、僕は座学は優秀の方に入るかもしれないけれど、今の実力では戦場で足手まといになるだけだ。もっとマルコのように文武両道じゃないと、きっとやっていけない」
「それにしても凄いわ。あんな短時間で答えを見つけちゃったんでしょう?」
「まあ、母親になったつもりで考えたら、ちゃんとした答えを探さざるを得なかったんだ」
「母親のつもりで?」
「うん。もし大切な誰かがライオンの人質になってたら、どう切り抜けるか、ってね」
「それはミカサかエレンの事?」
ぷっ、と不意にアルミンは吹き出してしまった。何かおかしな事でも言っただろうか、とシャロンはただキョトンとした表情で笑う彼を見つめる。それを見たアルミンは肩を震わせたまま謝った。
「あ、いや、ごめん。なんだか想像できなくって。エレンかミカサが捕まっても、捕まってない方がライオンを叩きのめしてそうだからさ。あの二人はすぐに行動に出る性分だから、捕まった時点で何かしらの反撃は食らわせるよ」
「それもそうね」
確かに、とシャロンも共に笑いながら納得する。付き合いはアルミンよりも浅いが、エレンとミカサの性格は他の人達よりも把握しているつもりだ。何かと血の気の多く、考えよりも行動が先にくる二人には、「猛獣の人質」ほど似つかわしくないポジションは無いだろう。笑って次の話題を探すが、ふと疑問がシャロンの頭によぎった。
「じゃあ、アルミンは誰をライオンの人質にさせて考えてたの? 凄く興味があるわ」
「そ、それは、その……」
エレンやミカサではないのなら、誰を思い描きながら答えを導き出したのだろうか。シャロンはとても気になった。どもるアルミンを見ては尚の事。焦り始める彼を見据えながら答えを待つ。しぱらくキョロキョロと目を泳がせていたアルミンだが、覚悟を決めたような表情で、彼はシャロンと向き合う。
「き、君なんだ、シャロン」
顔はもちろんの事、首や耳まで赤くなりながらアルミンはそう言い切った。