【ツキプロ】 ALIVE SOARA中心夢小説まとめ
第8章 ヒーローになりたい(大原空)
幼い頃からいつも、手を差し伸べてくれたのは君で。
俺はあはは、と笑いながら泥んこになっても楽しかった。
懐かしい夢を見た。
小学生になる前。
まだ俺もまひるも幼稚園に通っていた頃の話だ。
運動会のかけっこで一等賞になりたくて、毎日のように運動場で走り回って遊んでいた。当然、まひるもいっしょに。男女差なんてなかったあの頃、いつまでも二人で走っていける気がしていた。鬼ごっこでも、ケイドロでも、何をしても楽しくて。絶対一位とろうね、なんて約束もした。
しかし。
運動会当日、俺は風邪をひいてしまって。参加することがどうしてもできなくなった。高熱を出してる中、泣きながら外に出ようとして家の中に押し戻される。苦しくて、熱が出てあついはずなのに心はひんやり冷たかった。
しつこく駄々をこねたものの、そんなのが通るわけもなく、俺は一日を家の中で過ごすことになった。仕方ないとわかっていてもまだ未熟な心じゃ納得なんて出来なくて、泣きつかれて眠るまでずっと文句を言っていた気がする。
それくらい、悔しかったんだろう。
『そら!』
その日の夕方、少し砂のついた顔で君が会いに来てくれた。
『そらのかわりに、いちばんとったよ!』
そう言って笑って、紙でできた一位の金メダルを俺にくれたんだっけ。
『これ、そらといっしょにとったメダルだから、そらにあげるね』
自分が一番になった証なのに、何のためらいもなく俺に譲ってくれたまひる。熱に浮かされていたはずなのに、その時の君のあったかい顔が今も鮮明に思い出せるんだ。
パチ、と目を開ける。
本当に懐かしい夢だ。
今はもうあの頃よりずっと大人に近づいていて、走り回って遊んだりすることはなくなった。
けれど。
『空、起きたんだ』
「まひる、」
俺は多分、今すごく寝ぼけた顔をしてるんだろう。
けど、どうしても伝えたくて彼女の細い腕を引いた。
『わ、空?どうしたの?』
「まひる、俺ね、夢見たんだ」
『夢?』
「そう。幼稚園の頃さ、運動会の日に風邪ひいたことあったじゃん。あの時の夢」
『あったね、そんなこと。』
「あの時かけっこで一位の金メダル、俺にくれたよね」
『よく覚えてるね』
「そりゃ、まひるとの思い出だからね?」
『ふふ』