第5章 水と火
「差別されるのも、見るのも辛いのよ
いてもたってもいられなかったわ・・。」
悲しそうに話すアランに、ヒルトは肩にガンドレットをはめた手をおいた
「そうとなれば、全力でサポートする」
「ヒルト・・」
「アランは俺たちの仲間だから、力は貸すさ
ただ、どうしてそこまでリザードマンに協力するのか知りたかっただけなんだ
勝手に思い出させたくない過去まで話させてしまって、ごめん」
ヒルトの丁寧ともいえる対応にアランは驚いた
同じ歳とは思えないほどの大人な彼は
きっとアランが経験した境遇とは比較できないほど
苦難を乗り越えたのだろう
ヒルトの過去を聞く必要は、今はない
だが、いつか必ず知りたいとおもったのだ
どうすれば彼のように、強くまっすぐに生きれるのかを。
風は加速し、リザードマンの集落に着くまでもう少しだった
そのころ、リザードマンの冒険者ゼルベウスは魔女に教えられた洞窟に向かっていた
「ミーナ、いるか
俺だ、ゼルベウスだ」
雫が天井からしたたり落ちる音が響く
地面は洞窟の水で所々水たまりができ、湿気に覆われた空間はまさにリザードマンが一時的に身をよせるに適応していた
「ゼルベウス・・なの?」
「ミーナ!」
洞窟の岩陰から緑色の尻尾を振り、二足歩行で近づく女の声を発した一体のリザードマン
彼女を見るや、すぐに名を呼び、駆け寄るゼルベウス
「あぁ・・本当にあなたなのね!」
「そうだ。
長い間、寂しい思いをさせてしまって悪かった」
抱き合う二匹のリザードマン
ミーナの背後から小さなリザードマンが二匹、ゆっくり近づいてくる
「見て、私たちの子供たちよ」
ミーナは二匹の小さなリザードマンを抱きかかえ、ゼルベウスに寄せた
「俺たちの子供・・そうか、俺が集落から追い出された時はまだ卵だったな」
無邪気な笑子供に、ゼルベウスは微笑ましく見つめてしばらく抱き続けた
「―――――・・・。」
そして子供を離し、真剣な目でミーナを見つめた
「どうして・・集落をでてこんな場所に隠れているんだ?
まさか、俺を探しに来ただけじゃないだろう
君は僕を探すためだけに子供たちの身を危険にさらす程
愚かじゃない」
「・・・集落内が飢饉になっているからよ」
「?!」
「捕れる魚はもうほとんどないの。
子供たちに満足してご飯をあげられないなら、外にでるしかなかったわ」