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IN DREAM2

第14章 土族


持っていた荷物をテーブルに置き、クライヴはローランの手元にあるカルテに視線を向ける
「戦いから逃げた火族の治療だけして満足なのか?」
「・・いきなりどうしたんだい?」
「ヒルトを助けてくれた時にあんたの実力は見た。
あれだけ迅速な治療が出来るということは
それほど経験と知識があるはずだ。
そうだろ?
アンリ」
「・・・うん。
アタイは思うの!
先生はもっと世の中に知ってもらうべきよ!
こんな街中で火族だけを診るのじゃなくて
色んな人を助けれるはず。
前に話した時、話をはぐらかされたけど
今日はちゃんと答えて欲しい。」
「・・・」
ローランは手元のカルテを片付け、棚に収納してから
アンリの目をまっすぐ見る
「アンリ、僕はこの街が好きでずっといるんだ。
たとえ実力があって他の街で賞賛される未来があるとわかっていても
ここから出るつもりはない」
「どうしてそこまでこの街に執着するの?」
アンリの問いに答えるため、ローランは本棚から分厚いアルバムを取り出し、白黒の写真を見せる
そこにはまだ若かりしローランと、包帯を巻いた傷だらけの少年と少女達が写っていた
「僕がこの街に流れ着いた時、火族の訓練に適さない事で
捨てられた孤児がこの街には沢山いたんだ。
餓死者もいれば、体が欠損してる人も地面に寝てるような所だった。
僕は前にいた街で上手く人と付き合えなくてね・・
路頭に迷ってた時、ここに来て皆んなと出会い、
僕なんかの技術だけでも治療を受けれることで
皆んな喜んでくれた。
その時に理解したんだ。
医者としての本当の役目は
目の前の患者を最後まで見守る事だと。」
「・・・」
黙って話を聞くアンリ。
ローランは話し続ける
「僕は名誉や称賛より、僕を必要としてくれる人達を助けたい。
そして出来る限り、この街以外でも普通に生きていけるような
養育もしてあげたい。
それが僕の夢だからね」
「先生はこの街には流れ着いた人が
金と戦が手に入ると知れば平気で
裏切るような奴でも、その夢は変わらないの?
例え先生が健康な体にして、英才教育をしても
簡単に人殺しに戻るのよ?」
「あぁ、知っている。
それでも、僕は夢を諦めないよ。
僕が医者である限り、どんな事があっても皆に生きる上での選択肢を与えるべきだと、そう、信じている。」
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