第14章 土族
フェアリスはイリヤに指を指す
「薬師が仕事をさぼっているか、仕事を放棄しているか、だね。
どちらにしよ、僕がお父さんの傍で付き添い、独自で薬の開発をした方が確実だ。
そのためにも、君には土族の族長になり僕は引退したいんだ」
いますぐ承認することが、フェアリスにとって最高の結果だろう
イリヤは事情を踏まえたうえで、あえて安易に答えられないと悟る
族長になるとは身内の安全は確保されるが、同時に命綱を一族に担わすのと同じなのだ
フェアリスが気づいている通り、土族の薬師やその裏にいる高官達はあえて父親の病を治さないでいる
そうしなければ、、フェアリスを族長へつなぎ止める鎖が無くなるからだ
それも本人が気づくレベルに。
「同じことが君にも降りかかると思っているのかい?」
自身の心を読まれたように話され、イリヤは目を見開く
「やっぱり、わかりますか・・」
「君が弟君を大事にしているのは知っているからね。
だから、僕の状態を聞いて躊躇するのもわかる。
この話は今すぐ答えてもらえるとは思っていないさ!
少し時間をあげるから、またお忍びで会いに来るよ。」
フェアリスはフードを深くかぶり、イリヤの前から姿を消す
イリヤが呼び止めようとしたが、霧のように姿を消し、その場にイリヤだけが取り残された
いつ、また会いに来るかわからない
インドリームの力も、どう使いこなせばいいのか、わからない
同時に闇の脅威は迫り、早く傀儡技術を完成させなければ
土族が滅びかねない
何も解決しないまま、次々と問題が降りかかるイリヤは
髪をくしゃくしゃにかき、一つ結びのゴムが緩み、取れかけるほどぼさぼさになる
「・・・・まずは、研究所に戻って傀儡技術を進めよう。
じゃないと話が進まない」
独り言をつぶやきながら、研究室へ戻っていくイリヤの背中は憑りつかれたように曲がり、足取りは重かった。