第4章 新たな仲間
「ライセイ」
優しくライセイの手を握りしめ、イリヤは武器をとる
「一緒に彼を救おう
ずっと魔獣になったり人に戻ったりと
行き来してると、彼は心が壊れちゃうよ
自分が魔獣だって自覚がなくても、それでも辛いと思う」
「あぁ・・そう、だな。」
両手に雷を纏わせた槍を持ち、ライセイは決意した
ティファールを倒し、全て終わらせるのだと
全身が黒い毛皮で覆われ、魔獣へと姿を変えていくティファール
声は人のものではなく、完全に獣の威嚇する声だった
「いくぞ、ティファール」
「俺たちも助力するからな」
「闇の衝撃波などは防ぎますから、ライセイ君とイリヤさんは思う存分に戦ってくたさい」
大剣と魔導弓を構え、ヒルトとユリエフは背後から守るように立っていた
「ありがとう」
魔獣と闘う瞬間を、クライヴは離れた場所から傍観していた
魔獣を囲う電撃と、樹海へ逃げられないようにイリヤの土の巨大な壁が周囲を包んでいた
ティファールの姿は跡形もなく、完全に魔獣への姿が変貌し
ヒルトが操る風の勢いが強く、逃げる事も襲う事もできず
その場で耐えることしかできていなかった
(すぐに終わるか)
成り立てのインドリームとはいえ四人がかりで戦えばすぐに決着はつく
何よりも一度交戦経験のあるヒルトがいれば確実に勝敗は見えていた
かつて、ヒルトと出会ったばかりのクライヴは精神がかなり不安定であり、記憶も意識も今よりハッキリとはしていなかった
全身傷だらけの状態で森の中を倒れているところを、ヒルトが発見し助けたのがきっかけで今にいたるが
何故怪我をしていたのか、今でも不明である
通常クライヴの体は傷を負っても自然治癒となり、深傷を負っても致命傷にはならないからだ
だが、ヒルトが発見した時は生死を彷徨っていた
己の正体も目的もない空虚な状態でいるとき、疑う程優しく接するヒルトの意図が掴めず、苛立ちを覚え
柄でもなく声を荒げて口論したことがあった
勿論感情の高ぶりは闇の力にも影響を及び、口論中はクライヴの意志とは関係なく闇の力が半暴走状態。
そして、その力に反応し、あの魔獣が姿を現したのだ