第13章 青い炎
「アドラを救いたい俺、火族として生きる俺、インドリームとしてヒルト達を仲間と慕う俺、そして、何もかも捨てて楽になりたがっている俺―――――」
「ジェイク・バルシウスという偽のインドリームに
真実なんてないんだ
こうやって精神体となって、ヒルトと話をしている俺は
どの人格なのかわからない時だってある」
ジェイクの過去が終え、暗闇の中で精神体のジェイクはうつむきながら呟く
「そうだな、今のジェイクがどういう人格なのか俺にもわからない。
けど、これだけは確実だ
ジェイクが願っている、アドラを救いたいっている夢はまぎれもなく本物だ」
「!」
「その夢があるからこそ、ここまでやってこれたんだ」
「ヒルト・・」
不安でどうしようもなく、頼りない表情のジェイクとは違い、ヒルトは光に満たされた瞳で見つめて話す
「友達を助けることを諦めるな
自分が死ねばアドラはインドリームとして生まれかわれるなんて、本気で信じるな
インドリームの力を行使してきたのなら、わかってるはずだろ?
この力は誰にでも引き渡すことはできないし、適正者でない者が無理矢理行使しようとすればどうなるのか。」
適正者でない者が行使した末路は〝死〟
その〝死〟は肉体だけではなく、魂を跡形も無く飲み込む本当の〝死〟だ
通常の〝死〟なら肉体が朽ち果てた後、魂は天族が回収して次の命へ転生させる
だが、インドリームの力を不適正者が使用した途端
力が暴走し、何も残らない〝死〟が襲う
それは過去のインドリームの歴史書に書かれている事実であり、誰もが知る真実。
「友達を救いたい一心で、おれは基本的なことが見えていなかったのかもな」
「だったら、アドラもそうじゃないか?」
「!」
「ジェイクは友達を守りたい気持ちが強く出て、アドラは自由を手に入れたい一心で大事な事を忘れていると思う。
ジェイクとアドラは本当の友達なんだろ?
だったら、ちゃんと二人で話し合えばいい
何が正しいとかそんな難しい話じゃない
お互いどうしたいのか、どう思っているのか
心から語るだけで未来は変わると思う!」
ヒルトの口からは、何も間違ったことは言っていない
言い返す言葉が思い浮かばない
当たり前だ
これこそ、ジェイクが願っていた答え。
裏切った仲間からの許しでも、間違った人生の否定でもない