第13章 青い炎
「俺は・・・ずっと偽物の記憶が本物と思い込んで・・
じゃあ・・俺が知るアドラの親は・・」
「親代わりの火族だ
そういう役でつけていた使い捨ての駒なんだよ
そんなの、考えればわかるだろうが。」
「っ!!」
怒りにまかせ、ジェイクは拳を振りかざす
ゴンっという音が先に響かせたのは、ナバルト市長の拳がジェイクの顎を直撃したからだ
「この期に及んで私達に刃向うと?
調教のし直しが必要かな?」
「っ・・・」
ふらつくジェイクは必死に立ち上がり、ナバルト市長とバリスタンを睨む
「・・調教なんで必要ない・・
例え、俺が嘘で塗り固めた過去で出来ていたとしても
俺が目指す目的は変らない」
「・・・。」
「アドラを救う。
俺が異界送りにさせてしまったのなら、俺が責任をもって鳥戻す!
それまでにこいつの肉体は安置させてほしい」
抜き柄となったアドラの体を抱きかかえ、憎しみと怒りと固い意志がジェイクの瞳に宿る
「フン、いいだろう
お前はこれより火族としてインドリームの力を行使し、我々のために働け。
まずは武功を上げ、正式に死風の暗殺部隊の隊員となり、インドリームにスパイとして潜り込め。」
「・・御意」
「今から5年後にはこの水族と接触し、交友しておくことだ
こいつといればインドリームの中に潜入しやすい」
「・・御意」
深く頭を下げ、ジェイクは火族として生きていくことを選ぶ
アドラの肉体の安置と引き換えに、力以外のすべてを火族に委ねたのだ
そうして成長し、ジェイクは水を操るアランと接触した
暗黒戦争のせいで他種族を苦手で避けていたアランに対し、
ジェイクは話術と、偽の人生を語った
その人生はアランと似たシナリオとし、孤独を抱える相手が仲間意識を芽生え、心を許しやすくするためだ
アランが次第に心を打ち明け、同じインドリームの仲間だと認識していく
まずはジェイクがアドラのインドリームとしての記録をとり、火族に情報を流していた
それが武功を上げ、自分は火族を裏切るつもりはないと証明する近道だったからだ
そうして次々と仲間の情報を売り、ついに決別の夜が訪れる
ヒルトを殺す
それが出来なければ、任務が失敗とされ、アドラの肉体は消される
知らない間にインドリームを慕っていた一面があるせいで
二重人格が更に多重人格化していくジェイク