第13章 青い炎
肉体の中に閉ざされたジェイクは必死にもがく
インドリームの力を少しでも行使すれば、この状態が打破できたであろう
だが、今のジェイクは完全じゃない
そこままでは自分が願っていた目的が思わぬ方向で崩れる
『アドラを・・守らないと!』
手をのばすように必死に表にでようとした時
ジェイクの抵抗力は弱まる
なぜなら、いびつな人格が語った言葉があまりにも信じられなかったからだ
「アドラ、お前は空っぽな人形なうえに、ジェイクに一度記憶を消されている」
「え?」
『え?』
アドラと、肉体の奥で閉じ込められているジェイクは声を合わせて聞き返す
「俺という人格は火族として生きるために備わったジェイクのもう一つの人格だ
つまり、何者でもないジェイク本人だ」
「ジェイク本人?
だったら、俺の記憶を消したのはお前なのか?」
「勿論だ。
お前が知るジェイクはインドリームの加護を受け、記憶の改竄が効かないようになった
だが、不可抗力として無意識に俺という生きるための人格が生まれた
ジェイクという少年はな、自分の夢を果たす為に、今まで無意識に俺と普段の人格を入れ替えて生きてきたんだ
それが偶然、火族のあの男の目にとまった」
「あの男?
ナバルト市長か?」
「いや、バリスタン・レジオルだ」
「!」
「バリスタンは〝俺〟が表にいる間に呪いをかけ、一定の条件をクリアすれば人為的に〝俺〟を出せるように操作した
そうすれば、記憶が改善されないジェイクという存在を操れるし、お前もついでに扱いやすくなるからな。」
アドラとは一切目を合わさないいびつな人格
対してアドラはまっすぐに目を見つめて疑問に思うことを問う
「俺は、お前に記憶を消されることで、族長と幹部の暗殺未遂という重罪に対して帳消しになったとナバルト市長から聞いた・・・
だった、お前は何を犠牲にしたんだよジェイク?!」
「・・・・・」
僅かな沈黙が流れ、冷たい夜の風が吹く音だけが響く
「自由、だよ」
「自由?」
「そう、俺は今夜起きることも全て知ったうえでお前の記憶を奪った
お前の命だけは守りたかったんだ」
「嘘つくな!
だったら、どうして俺が儀式の生贄なんだ!?
話が矛盾してるんだよ!
俺の命を守るなら、こんなことはしないだろ!」
「・・・。」