第13章 青い炎
頭部を殴られた衝撃でジェイクの意識は遠去かり、
暗闇の中、僅かに違和感を感じる
アドラと同じ術を施されているのだ
暗闇の光景はジェイクのこれまでの記憶が走馬灯のように流れているが、ガラスが砕け散るように映像は消えていく
「俺はこのまま消えるのか」
「いいや、消させはしない」
幼いジェイクが心の中で呟いた一言に答えたのは
薄い炎で覆われた人影
「君が友達を救いたいと思うなら、あくまで火族として生きるんだ」
「炎のインドリーム?
どうやって俺の中に・・?」
「それは君が夢を捨てさえしなければ、自ずとわかる。
今は術に身を任せ、眠るんだ」
先の戦場で偶然出会った真の炎のインドリーム
彼と出会ったのは偶然ではなかった
そう悟ったのは、ジェイクが目を覚ました時だった
上層部に記憶を改竄され、つぎに意識が戻った時には一月経っていた
頭の中には消されていない記憶と、上書きするはずだった偽物の記憶が存在する
そして、額には火族の暗殺部隊が持つ呪印が火傷のように植え付けられているのが手で触れてわかった
「・・・」
見上げれば、朝日を迎え入れるように飾られたステンドグラスと、錆びたシャンデリアと鉄柱
寝されていた場所は長椅子であり、正面には火神を祀る祭壇が飾られている礼拝堂
今いる場所は火族の占領地に建てられた教会だと気づき、最後にアドラと別れた場所から何十キロも離れた所にいることを悟る
「っ・・あいつ、どこに連れて行かれたんだ?」
幼い両足は先の任務で疲弊し、歩くだけでも痺れる痛みが伝わる
それでも、友を探す為に礼拝堂から抜け出すと、すぐ近くの部屋から多くの人の気配を感じた
そこに足を踏み入れるつもりはない
だが、もしこの中にアドラがいるならーーー
そう淡い期待を抱き、顔を覗かせた時、そこは地獄だった
全身傷だらけの兵士達が包帯を巻き、大広間の身廊に寝かされている
死体となっている者、生きる屍と成り果てた者、致命者を負わされ、呻きながら死を望む者
中にはジェイクと同じ程の子供までいた
「こんなに負傷者が・・一体何が?」
呆然と立ち尽くす精神体のヒルトは青ざめた表情で黙ってはいられなかった
「ここにいる奴らは任務に失敗し、これから記憶を改竄するために保管されてる
死体になった奴らはどうなったか知らない
魔獣を捕獲するための餌にしたのか、闇族に引き渡したかだな」
