第13章 青い炎
「がっ!?」
「よし、始めろ」
何も説明することなく、バリスタンはアドラに掛けた術と同じものを隠れて見ていたジェイクにも施そうとしていたのだ
「な・・・んで!
説明してくれ!
俺達は・・ずっとあんなことをされて戦っていたのか?!
アドラは・・俺の友達を騙してたのか?!
親もそろって!?」
必死に立ち上がろうとし、両足両手に力を入れるが、魔術と疲労が重なり四つん這い状態になるジェイク
目の前で葉巻を咥えながら、指先に灯る小さな炎で着火させるバリスタンは目を合わさず空を見上げなら煙をはく
「っ・・何とか・・言えよ!?」
怒りをあらわにするジェイクは腰に隠していた小型のナイフを取り出し、勢いよくバリスタンへ飛ばす
無音の中、バリスタンの真横の木に当たるが、その表情は変わらない
「威勢がいいな、ジェイク
だが、お前が真実を知ったところで現実は変わらない
ここで本当の事を教えてやっても、お前はすぐに忘れて偽物の記憶を植え付けられるんだよ
そんな無意味なことする程、俺はお人よしじゃねえ。」
「偽物の記憶?!
じゃあ俺とアドラは・・いや、他の火族全員偽物の記憶で生きてきているのか?!」
「んなわけあるか。
この術が効かない火族もいるし、俺もそうだ。
だが、効果がある奴らには全員に術を施している」
「嘘だ!
そういうお前こそ、偽物の記憶を植え付けられているに決まってる!」
「俺にはかけられてない。
証拠にお前の額にある呪印、俺の体にはないからな」
「え?」
「その額についてる特高勲章の印は同時に呪いだ
お前やアドラや他の暗殺部隊の中で呪印があるのは、偽物の記憶を受け付けた証拠に浮かび上がる。
そもそも、お前は昔からこれを繰り返して生きてきたんだぞ?
アドラを友達って言っているが、それが本当の記憶なんてどうして言える?
俺達が与えた偽物だとは思わないのか?」
「な・・・」
言葉を失うジェイクは絶望していく
今まで自分が信じていたことが根本から信じれなくなったからだ
アドラを大切に思う気持ち
楽しんだ記憶
共に任務を遂行した思い出
全てが偽物だとすれば、一体自分は何なのか
何が真実で、何が偽りなのか
区別がつかない中、バリスタンは鼻で笑い、配下の一人に手で命令した
「もういい、やれ。」
直後、ジェイクの視界は真っ暗になり、ヒルトが見ていた景色も闇に包まれた
