第13章 青い炎
炎が揺らめく
懐かしい光景が目の前に広がる
「ジェイクー!
こっちだ」
青い髪の少年はこちらに手を振り、親友の名を呼ぶ
「はっ!」
ようやく意識がはっきりしたヒルトは目を見開き周辺を見る
真夜中なのに、月灯りと炎で昼間のように明るく
ピラミッド型の塔を中心に円形に商店が並び人が賑わう
ほとんどが髪色が赤く、火族が大半だが、獣族や風族、土族や龍族が行き交う街の中でヒルトは目の前に立つ少年の頃のジェイクを見つめていた
「アドラ、勝手に行くなよー」
「ごめんごめん!
あっちに珍しい芸道人が来てるから、見に行こうぜ」
「うん!」
幼い頃のジェイクとアドラは無垢な少年であり、火族が年に一度行う大華祭という祭りに来ていた
守り神である火神を称え、自らの魔力やそれに代わる供物を提供する
それはどんな種族も受け入れられ、魔力や供物を提供した者は火神の加護を受ける
だから他種族が参加し、賑わいを見せていた
この時代は暗黒戦争が始まる5年前
まだ世界中の種族が平和に過ごしていた時代だ
「火族として育った人は、小さい頃から戦闘術を仕込まれ、特に優秀な遺伝子を持った家系は物心つく頃から過酷な訓練を受けている
そう、思っていたけど、あのジェイクとアドラはそんな感じには見えない」
「そりゃそうだ。
この頃、俺達は何も知らなかった・・いや、何も知らないように仕組まれてたんだから。」
「!」
先まで気配が感じなかった隣で、ジェイク本人の姿があった
「なんだよヒルト
ここは俺の記憶だろ?
俺がいておかしいことなんてないはずだ」
「そ、それはそうだな」
ヒルトは目を合わさず冷淡に話すジェイクを見つめ、確認したいことがあった
「ジェイク
さっき言った何も知らないように仕組まれていたって、どういう意味なんだ?」
「・・・」
大道芸人達の芸術を見て目を輝かし、楽しそうに過ごす過去のジェイクと、アドラを見守りながら、口をゆっくり開けてため息をつく
「ヒルトの認識は間違ってない
火族は基本的に戦闘民族だ」
「けど、この光景はとても・・・・」
「そう、生まれた時からずっと戦闘訓練をさせられてはいたけど、それを自分の意志で出来るようになる奴は極まれだ。
だから大半の子供達の記憶はいじられ、戦闘をさせられたってことだけ忘れるように火族の上層部はしている」
「そんなことどうやって?!」
「呪いだよ」
