第13章 青い炎
ヒルトは大きく息を吸い上げ、額に風族の紋章を浮き上がらせ、ジェイクへ勢いよく頭突きをした
鈍く低い音がお互いの耳へ響き、ジェイクが先に力を緩め炎は弱まる
「風よ、我が声に応じよ
行き道は彼の炎の誕生した真実の時
芽吹くは覚悟の夢
汝の言の葉が生まれた原初に自らの力、全てを捧げよう」
「くっ!
ヒルト・・・
俺の過去に意識を飛ばそうっていうことか?!」
頭痛で頭部を痛めるジェイクは右目をつむりながら
演唱するヒルトを睨む
「過去を観るだけじゃない
ジェイクが落としたものを一緒に拾いにいくんだ」
魔方陣と風族の古代文字が浮かびあがりながら、ヒルトは冷静に語る
「もし、一歩間違えれば俺はジェイクの炎に飲まれて魔力は消える
けど、俺にとってみれば仲間のジェイクを信じれるからこそできる技だ」
「!?」
「俺の事、本気で殺したいならいつでも殺せよジェイク
俺は立ち向かう覚悟はあるぞ。」
「ヒルト・・・
お前――――――」
ジェイクが最後に観た光景は光に包まれながら、微笑むヒルトの表情
すぐにヒルトの風の力が発動し、2人の意識はジェイクの過去へ飛ばされていく
抜け殻となった2人の肉体は眠りについたように倒れる
少し離れた場所ではヴァンとクライヴ、ユリエフ、アラン、ライセイ、イリヤが交戦していた
衝撃波や流れ弾が当たらぬよう、見守っていたラルザとアンリはヒルトとジェイクへ近づき二重の結界を構築していく
白くガラスの壁のような結界が完成し、アンリはラルザに背を向け武器を握る
「・・・アタイはこの人達を守ります
どうか、助力をお願いします・・」
アンリから出せる精一杯の協力要請
今まで孤独に戦ってきたアンリは、ローラン以外に何かをお願いすることがなかったため
どんな言葉を並べて人にお願いをすればいいかわからなかった
だが、今はそんな甘えで通用する環境ではない
一人でも多くの味方を付け、ローランを救うことに全て懸けたいのだ
「――――私はクライヴ様の騎士。
この肉体も魂も力は全て主のもの。
けど、貴方の力になることは引き受けるわよ
ヒルト・クローズを守る事と、ローランを救う事が主からの命令。
未熟な元火族・・私の指示に従いなさい
無駄なく大切な人を守る方法を教えてあげる」
「はいっ!」