
第13章 青い炎
「ヒルト君が仲間を大事に思ったのは、マナドさんっていう人と風族のみんなと旅をしたことがきっかけなの?」
イリヤの素朴な質問にヒルトは直ぐにそうだと答える
自分一人では何も出来ず、戦争の中で何度も死ぬ思いをしたと言う
「風のエレメンツを所有する風族は姿を透明化できる
戦えない一族の子供や老人達を逃すため、ずっと姿を隠して一族を連れて行ってたけど、魔力が切れた人から透明化が出来なくなって姿が出てきた
そうしたら直ぐに龍族と闇族が攻めてきて・・
けど、風族長達が助けに来てくれたんだ
〝種族間関係のない仲間〟を連れてな。」
「種族間関係のない仲間?」
「そう、風族長達は戦争を終わらせたいと思ったる人達を仲間と言って、一緒に戦ってたんだ
その中には闇族や龍族、火族やその眷属もいた」
再びヒルトから発せられる事実に、クライヴを含めユリエフ、ライセイ、イリヤ、アランは凍りつく
どの種族でも脱走兵がいたという事実がなかったからだ
戦場が混乱している中で、脱走兵の確認などしている暇はない
それでも風族と手を組んだ裏切り者がいる可能性が少しでもあれば、王族のクライヴや聖人のユリエフには何かしらの情報が入るはずだ
それさえもないということは、何者かが完全に隠し切ったと言える
「まさか、種族間関係のない仲間達を明るみにしないよう隠してきたのは風族達とヒルト・・お前なのか?」
信じ切れない気持ちが渦巻く中、クライヴは問いに対してヒルトは優しく微笑み返す
その微笑みは肯定しているのも同然だ
「種族間関係のない仲間達は、俺の一族を助けてくれたんだ
同じ命、こんな意味のない戦争で散るのはおかしいって言ってな。
俺、その時にわかったんだ
仲間っていうのは種族間関係ないし、どんな人にも必要なんだって。
仲間がいるからいまの自分がいて、仲間がいてくれるから恐怖にも立ち向かえる」
「だから私やクライヴ君、皆さんの種族が異なっていても
いつも同じ仲間だと言ってくださるのですね」
「当たり前だろユリエフ
種族が違うだけで、志は変わらない
だから、ジェイクがどんな過去を持った火族でも
あいつが目指してる夢が俺達と同じなら仲間だ。
誰がなんと言おうと、助けに行く!」
(そうか・・ヒルトにとって裏切りなんて小さいことなんだ
俺よりも地獄を味わって見てきたのかよ)
ライセイは拳を握りしめて心の中で呟く
