
第13章 青い炎

「何者かわかってないって、どういうことだよヒルト?!
お前は風族でインドリームのリーダーだろ?」
「あ、インドリームなのは間違いないよ、ライセイ。
ただ、風族としての過去の記憶が殆どないんだ」
「っ・・・詳しく話してくれ」(なんだよ記憶がないって?!
俺と同じ境遇なんてものじゃない)
「うん
一番古い記憶は全身が血まみれで激痛が走りながら、古い遺跡の廃墟で倒れてた光景だ
雪が降りかけてて、寒いなって思いながら体温が低下して死んでいく体の感覚が脳の奥に伝わっていく中、俺と同じくらいの歳の少年が通りかかって助けてくれた
その人は風族の族長の一人で、旅路の途中で偶然見つけたとはいえ、見ず知らずの俺を看病して、戦い方や生き方、風族以外の多様な言語、世界の事情を教えてくれたんだ」
「言語までですって?
種族間の言語は多少違う所があるけど、基本は共通の言語を使ってるはずよ
ヒルト、あんた何語話してたの?」
「ごめんアラン
もう思い出せないんだ
俺を助けてくれた人、マナドさん曰くどの種族も過去から今に至るまで使った事が確認されない言語だったらしい」
「初耳ですね
私は天族として世界で存在してる全ての言語を知っていますが、風族も遅れを取らないほど知識を持っているはずです
それに族長であろう方が知らないなんて、考えられませんが・・・
すみません、話を続けて下さいヒルト君」
ユリエフは深く考え込みながら、クライヴへ目線を送る
天族で把握できてない事が万が一あることもある
それは闇族による隠蔽が原因だからだ
ユリエフが知らないだけで、闇族だったクライヴなら知っている可能性を考慮し、この世に存在しない言語などあるのか確認するも
クライヴは静かに顔を横に振り同意はしなかった
つまり、何百年生きているユリエフとクライヴでさえ知り得ない事があると判明したのだ
静寂が流れる中、再びヒルトは過去を語る
自分が風族だとわかったのはマナドさんに魔力操作方法を教わったからだであり、自分には風族として生まれた事や親、家族の記憶は一切無い
そして風族として一族と共に旅をし、世界を見て回ったことや暗黒戦争で族長達と戦った事を語る
「空っぽの俺にとって、風族長のマナドさんや他のみんなは仲間として欠かせない存在だったんだ
記憶が無くても、俺はマナドさんに出会うまでは仲間なんてそこまで大事にはしてなかった」
