第13章 青い炎
「うん。
上手く伝えられないけど、今のジェイクは不安定だと思う
力の面でも精神的にも・・
だからこそ、俺の風の力であいつの炎を後押しできれば、きっとーーーー」
「風の性質を利用して炎の力を増幅させるのですね
ですがそのやり方は一歩間違えれば危険ですよ、ヒルト君」
「ユリエフちゃんの言う通りだよ!
もしジェイク君の炎がヒルト君の風を飲み込んだら・・それこそ・・」
「そうだな、ジェイクの炎に飲み込まれたらその分、俺の力は無くなる
けど仲間を救うためだ。
多少の危険は承知してるつもりだよ、ユリエフ、イリヤ」
「・・・・」
「それに、俺は一人で戦うんじゃない
同じ夢を持って戦ってくれる仲間がいる!
仲間がいてくれて俺のことを信じてくれる限り、負けない
そしえジェイクも必ず救ってみせる!」
ヒルトはまっすぐとした目を仲間に向けて自身に満ちて話す
仲間を救う時のヒルトの瞳は揺らいだことがない
それはかつて闇に飲まれかけたクライヴを救う時に見せたものと同じものであり、側で見てきた仲間なら疑いの余地がない事を一番理解している
「なぁ、ヒルト
こんな所で聞くのはおかしいと思うけど、教えて欲しい。
何で仲間のために危険な事まで迷わず出来るんだ?
それに、ジェイクは裏切っただけじゃなくてお前の命を奪おうとしたんだぞ?」
一心揺らぐ事のないヒルトを見ているからこそ、ライセイは確認しておきたかった
仲間のために全力を尽くすリーダーが、どうすればここまで強い夢を持てるのか。
過去に慕っていた兄から裏切られ、命以外の全てを奪われた経験をした以上、ライセイにとって仲間からの裏切りは酷なものであり、ヒルト程全力を尽くして救おうと思えない面があったのだ
(もしヒルトも俺と同じ経験をしていて、それでも裏切りを責める事なく救う事に力を注ぐって言うなら、そこには俺では考えられなかった新しい考え方がある・・
その考え方に習えば俺も過去を克服できるかもーーーー)
ライセイは心の中でヒルトから語られる過去を知る事で、自分が変わるきっかけがあるのではないかと期待を募らせていく
僅かな沈黙が流れ、ヒルトは穏やかな表情をしつつも
遠い過去を見つめるような虚ろな目をして立ち止まった
「俺さ、自分が何者なのかよくわかってないんだ」
「・・・え?」
予想もしていなかった冒頭で直ぐにライセイは凍りつく
