第13章 青い炎
「それに加え、狙いはヒルトのようね」
「そうだな、アラン
アルトリアの仲間のヴァンが俺の力を利用して、アドラを炎のインドリームにさせようとしてるし、ジェイクはその供物となるつもりだ・・ローランさんも道ずれにして・・。」
「そんなこと、させない!」
静寂した空間の中、アンリが怒鳴るように声を上げる
「アタイは、ローランさんを助けるためにここに来たのよ
例え死風の暗殺部隊に殺されることになっても、この命に代えてでも守る必要がある!」
「・・・・」
空気を読まない奴―――――
そんな冷たい目でアンリを見るクライブの視界を遮るように、ヒルトは真逆の目をして前に出て歩く
「アンリさん、自分の命に代えてでも誰かを守ったとしても、守られた側は救われない
俺たちは敵の目的を知っても、やることは変えない」
「!」
「だから、簡単に命を投げ捨てるようなことは言わないでほしい。
君の命は、君だけのもので他に代えられることは出来ない
大丈夫、俺達を信じてくれ。」
ヒルトのまっすぐな瞳を見つめ、かつてローランが瀕死の自分に向けたものと重なる
光に包まれ、夢をしっかり持った者の瞳そのものだ
「・・・すみません、取り乱しました」
「大丈夫さ
ローランさんが心配だもんな
それにあんな不安にさせる状況を見せられたら、俺でも同じことになっちゃうだろうし」
「いえ、そんなことは・・」
恥ずかしそうに語るヒルトに、アンリは否定的な意見を口に出そうとするも、適切な言葉が浮かばず、口ごもりする
それはヒルトが頼りないからではない
こういう時にかける言葉を知らないのだ
火族として訓練を積み重ねてきたが、本心から語る機会がなかったことから経験不足だった
和んだ空気に包まれる中、殺気に満ちた視線がインドリームを捕える
真っ先に気付いたクライヴは殺気の元が正面の塔の中層の窓から放たれて、その正体も目で捕える
「ヒルト、構えろ・・ジェイクとヴァンだ」
「!」
クライヴが大鎌を両手で握りしめ、すぐにヒルト、ユリエフ、ライセイ、アラン、イリヤも武器で身構える
30メートルはある塔の窓から一気に飛び降り、暗殺者の目をしたジェイクはゆっくり歩いて近づく
その後方ではヴァンが葉巻を咥えながら、両義手で拳銃をまわして付いてくる
「ジェイク・・・」
ヒルトは深呼吸し、武器を構えながら先頭に立つ
