第13章 青い炎
「初対面のあんたに何がわかるっていうんだ?
アドラの過去を見たからって知った口聞くな」
「確かに、僕は君の事をよくわかっていない
だが、これだけ言える。
君に起こる人格の入れ替わりは他人なんかじゃない
ある条件が重なれば別人格となるが、それも全て君自身だ
本当はわかってるんだろ?
アドラ君の記憶を消したあの日、君は夢へ進む自分を恐れて封魔の」
「それ以上言うなっ!!!」
ジェイクは声を荒げて怒鳴り、拳に宿る憤りの炎を結界に押し当てる
「二度と俺の前でその事を言うな!
あんたが何者で、何を知ってるのか今はどうでもいい・・・
俺は俺の意志で全て決断してきた
アドラを救いたい気持ちは他人の夢じゃない、俺の夢だ!
そしてあいつが持つ夢も同じだ。
けど、それを否定して他人の心に土足で踏み込んでくるなら無理に結界を壊してまでも半殺しにするぞ!?」
結界に押し当てた炎は勢いを増し、厚手のガラスのような壁にヒビが入る
同時にジェイクの右手は出血し、血が滴り落ちる
それでもローランは表情を変えず、冷静な態度を貫く
「・・・はっきり言おう。
僕も、君みたいな半端な殺人者の事を知りたくはない。
けど、僕はこうなることを受け入れている
あの子との約束であり、自分と向き合っているからね」
「あの子?」
「君の中に眠る夢を信じた少年だ
あの子は君が道を踏み外し、間違った方法を取ったとしても夢だけは失わず、信念を持って正しい在り方に戻ると言っていた
当時は僕もそうなるのだと信じていたが、今となれば残念な結果になるのじゃないかと心配だ」
ローランの話にジェイクは憤りの炎を鎮火し、結界の壁から拳を話していく
「まさか、お前は知ってるのか
ヒエンのこと・・・」
ジェイクからの問いに、ローランは口を開くことなく静かに頷く
その答えでジェイクの中で一つの事実が判明した
何故ローランが炎の瞳を持っているのか
アドラの過去を同時に見ることが出来、知るはずもない自分自身の過去を語ってくるのか
全てヒエンが関わっているからだ
そして、もう一つの可能性も濃厚になった
「アドラの光景をあんたが見たのなら、まさかヒルトにも?」
「流れているだろうね
彼は特別な存在だ・・君に会いにここに来ているなら必然的に夢の影響を受ける
君自身の過去を勝手に知られるのも時間の問題だろう」
