第13章 青い炎
「任務のため、俺は行きます」
ジェイクはマントを脱ぎ、俺につきつけてそのまま目を合わさず炎の壁を簡単にすり抜けていく
俺が後を追うと炎は燃える勢いを増し、ジェイク以外の存在を拒絶する
「っ!」
「アドラ君は入れない
これが現実だ」
「ナバルトさん・・・・」
俺は一人で炎の壁の中に消えていくあいつの姿を見つめ
非力な自分を考えると胸が締め付けられるような感情が湧いた
まただ――――――。
また、人間らしさが出てくる
おかしい
なんで俺はジェイクを見ていると・・・
いや、ジェイクと俺を比較したときに感じるんだ
失ったはずの記憶、俺が持っていた心・・・
ズキンッ
「っ!」
頭痛が激しくなっていく
脳が締め付けられるような圧迫感
まるで両手で握りつぶされるような痛み
そんな中、ちらつく遠い記憶
橙色の髪をまとめた少年が笑顔で手を差しのべて来る
『アドラ』
俺の名を呼んでくるそいつはいつも笑っていて
俺に夢を語ってきている
『俺は立派な火族になって、多くの人を救う英雄になるんだ』
――――立派な火族で英雄なんて矛盾してるだろ。火族は殺戮の先頭民族だし、俺たちはいつか暗殺部隊に入隊する候補生だぞ――――
俺の声が頭の中で響く
過去の俺の声だ
『いいや、今のやり方で火族として生きるんじゃない
俺は火族として正しい在り方で生き、戦い、人を救いたい
まずは力をつけて俺たちの実力をわからせてやらないとな』
――――そんなこと、お前じゃできないだろ
インドリームでもないお前に・・・――――
『いいや、俺とお前ならできる!
アドラにも夢があるなら、それは力になるよ』
「・・・・・そう・・なのかな、ジェイク」
気が付いたときには過去のジェイクと話していた
間違っても口にだしてはいけない場所で
俺は自ら記憶が戻ったのだと自白したのも同然だ
真後ろで全て聞き、魔術で火族の幹部や隊長に全て情報を流していたナバルトがいるにも関わらず
「っ?!」
気が付いたときには遅かった
ナバルトは俺を魔術で拘束し、意識をあえて残したまま両目を潰した
「っああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
痛みもだえ苦しむ俺の声は城内で響き渡る
けど、誰の足音もしない
聞こえるのは、炎の燃え盛る音と、鋭いナバルトの爪からしたたり堕ちる俺の血
「ようやく尻尾をだしたか」
「なにを?!」