第13章 青い炎
ーーーーー今から13年前に遡る
俺、アドラ・ベルグマンは死風の暗殺部隊として多くの暗殺技術や対話術、スパイとしての経験を積み、隊長補佐として任務を遂行した
死風の暗殺部隊をまとめているのは、赤髪と赤い髭を生やした大柄な男、バリスタン・レジオルだ
バリスタンは基本的に戦場に出ることはなく、後方で指示する
それは、バリスタンの脳の中には国家レベルの機密事項の情報が収集されており、多種族に何一つ渡ってはいけないからだ
万が一、闇族や天族に捕縛され、精神支配や魔力を吸収して記憶を覗き見された暁には、火族は呪印を発動してバリスタンを自害させなければいけない
そうなれば部隊の統率は乱れ、バリスタンという男を育て上げてきた今までの労力と時間が水の泡だ
だからこそ、上に昇格すればする程、表に出ることは少なくなってくる
俺はバリスタンに任務の報告と次の指示をもらうため、火族の遺跡にある隠し通路を使って湿り切った空気を吸い込みながら歩いていく
薄暗い空間は炎のみで灯され、複雑な迷宮に近い道となっている
それでも分岐点で立ち止まることなく足を進め、とある一室にたどり着く
訓練中に何度も教え込まれなければ把握できない道
それでも俺は完璧と言えるほどの適応能力と、記憶力には自信があった
「アドラ・ベルグマン
ただいま任務から戻りました」
「入れ」
低く鈍い男の声は静かに響き渡り、俺は目の前の扉に触れた
丸石で作られた扉は火族が触れるだけで自動で転がり、バリスタンのいる部屋へ招き入れる
部屋の奥には、はちきれるような筋肉と血管を浮かせ、両腕を組みながら仁王立ちし、俺を見つめているバリスタンがいる
「アドラ、報告をしろ
龍族は本当にアレを開発していたのか?」
「はい。
1年に及ぶ潜入により、やっと判明しました
龍族は聖天堕としを使用し、何体か天族を堕とすことに成功しているようです」
聖天堕としーーー
それは天界を住処として地上圏内に降り立つことのない天族を
強制的に地上に引きずり下ろし、霊体として使役させることができる禁術
かつて龍族が崇める雷神が生み出した術であるが、天族の数が一方的に減り、世界の秩序が崩れることを恐れた光の神が封印した神話がある
それを龍族がどうやって封印から解いたかまでは解明されていない
わかっていることは、既に使用され世界のバランスが崩れかけているということだ