第12章 炎の意志
納得できない命令
考えられない環境
これから迫り来る光と闇の恐怖
全てが混ざり合い、必然的に声はかき消されるような小声となる
だが火族として生きてきたジェイクには、どんな命令でも従うという服重心が染み付いていた
今の自分は火族の人格なのか
それとも別の人格なのか
己自身でも理解できない状況でアドラの話は進んでいく
「戦闘組には後で俺の能力で個別に指令をする
コズモ、お前はこの医者・・ローランを監禁室へ移送し、情報を取り出せ
こいつの中には炎のインドリームの秘訣が埋め尽くされてる」
「はい」
軽くお辞儀をしたコズモ
そしてアドラはこれからの計画を流暢に話した
要約するとこうだ
まずはヒルトを捕獲し、ローランと接触させインドリームの力の共鳴を発動される
共鳴によって生み出されるのは、ローランとヒルトの記憶から能力まで全てだ
引き出されたもの全てはアドラの中へ流しこみ、インドリームの力に少しずつ慣らすための肉体を形成していく
最後にヒルトの風の魔力を強制的に抜き取り、ローランから炎のインドリームの力をアドラへ移植させる
そうすることでアドラはインドリームの細胞を持つことなく、自らの肉体で真のインドリームとなれ、完全に現世に戻ってこれるという
真のインドリームとなった暁には火族へクーデターを起こし、死風の暗殺部隊を独立部隊と改革させ、一族の統率者となる事を目指していた
「俺は、火族が陽の光を浴びる事なく、裏の世界で生きている事自体が間違っていると思う!」
自らの計画を話し終え、次にアドラは自らが掲げる夢を語る
「火族が存在することで世界には戦火があり、戦火があるからこそ武器の生産や軍資金が豊富に動く
兵士には十分な教育を与えられ、戦に特化した魔法開発もされる
軍事力が発達した国は大国と化し、不毛な争いを続ける小国家を束ねる力を有する
一つの大国が存在すれば、種族間の壁は無くされ、世界は一つとなる」
アドラの声が響き渡る空間
他の誰の声も聞こえず、呼吸音すら無音に近い中、更にアドラは話し続けて声が大きくなっていく
「この大義を成せるのは、秩序を守る天族でも、混沌をもたらす闇族でも、生命の管理者である水族でもない!
この世界を炎の力で燃え上がらせ、人としての本質を引き出すことができる火族だからだ!」
「・・スバラシイ」