第12章 炎の意志
例えどれほど犠牲を生んだとしても、火族にとって雇い主は絶対であり、契約を破棄することは許されない
それは炎のエレメンツを持つ戦闘民族故か、それとも闇という協力な力に魅了された上層部の影響か
真実はわからないまま、火族は実験に移行する
被験者は2名必要だった
1名はヒエンからインドリームの力を奪うため、体力、魔力、精神力を限界までそぎ落とす誘導者
そして、追い詰められたヒエンに禁術を施す術者
それぞれが波長を合わせなければ、二度と成功しない禁術
通称、異界送りと呼ばれるこの術は闇族が開発したものだ
本来、魔力の型、肉体の構造、血液の量等、様々な理由から他人の能力は簡単に奪えない
それがインドリームであれば尚更だ
それでも、火族は成功させる術を身に着けていた
死風の暗殺部隊が持つ〝強欲の剥奪”と呼ばれる術だ
相手の肉体の一部を生きたままそぎ落とし、能力を継承する者へ移植するもの。
高度な技術力が問われるが、暗殺部隊のエキスパートである彼等にとってみれば、そこまで危惧する内容ではなかった
異界送りと、強欲の剥奪を同時に使用することで、ヒエンからインドリームの力を奪いとることに成功する
当時、誘導者としてアドラと術者としてジェイクが選抜され、彼等は見事に成功させた
ヒエンの皮膚を生きたまま剥ぎ取り、ジェイクの肉体はヒエンと同様の組織細胞に変形していく
同時に見た目もヒエンと瓜二つになり、本来のジェイクの容姿は消え去った
だが―――――
インドリームの力がどういうものか真実を知らなかったのが仇となり、すぐに地獄が襲い掛かった
「―――――・・・」
(あの時、俺はアドラを犠牲にして・・・)
過去を振り返るジェイクは拳を握り、再びアドラを見た
何度みても変わらない姿
それは違和感を感じるほどだ
「アドラ、俺から一つ質問がある」
「どうした?」
ジェイクが一言口に出すだけで、死風の暗殺部隊の全員の視線が一斉に集中する
そんなことは気にせず話すジェイク
「お前がインドリームの正式後継者になるっていうが、どうやって行うつもりなんだ?
俺はあのヒエンから肉体を奪い、その影響で能力も奪えたにすぎない
お前が能力をすべて引き継ぐっていうなら、俺よりもインドリームに近い存在が必要だ・・けど、そんな奴はいないはずだ」
「いいや、いるんだよここに」
「!」