第3章 半魔
「マティウス兄さん!」
ヒルトの風から解かれたエリンシエは
倒れ、意識を無くしているマティウスに駆け寄る
「意識を無くしているだけですね
魔力の大部分と、体力もないでしょうし、安全な場所で休めたほうがよろしいかと思います」
「ユリエフさん・・」
「村で休めるのは難しいだろうし、俺たちが隣町まで運んでやるよ」
「ーーーいえ、兄は私の村で休めますし、私一人で運びます」
「でも」
「大丈夫です!
私も結界師なんですから、なんとかできますよ。
それに、兄さんの無実の罪を晴らさなければいけないですし!」
お辞儀をし、エリンシエは話し続けた
「短い間でしたが、お世話になりました。
鍛錬を積み上げ、次は私が皆さんの助力出来ればと思います」
「そんな畏まらなくてもいいんだぜ、俺たちもエリンシエの力になれてよかったし、学ぶことも多かった。
これから頑張ってくれよな」
「はい!
それでは、ありがとうございました。」
深くお辞儀をしたエリンシエは
マティウスと自信を結界で覆い、村へ転移した
エリンシエとマティウスを見送ったヒルトとユリエフは
お互い見合わせ、一息ついた
「人と半魔が共存する世界・・簡単な事ではありませんが、エリンシエさんのような強い志を持つ方が多くいれば
この世界は平和になるのでしょうね」
「ユリエフのいう通りだな
憎しみあうだけじゃ何もならない
みんなが笑って暮らせる、温かい世界を取り戻す・・
かつて起きた暗黒戦争は、もう起きないようにしなくちゃいけない。
その為の俺たちインドリームだな!」
決意に満ちた表情で話すヒルトとユリエフ
だがクライヴの瞳の中には、冷たく切り離すような闇を抱えたまま
黙っていた。