第12章 炎の意志
乾燥した空気が充満する中、咳き込みながら目を覚ましたジェイクの視界には夜空ではなく、暗闇を照らす小さな炎の光と鍾乳洞だった
「ここは・・?」
わずかに残る頭痛に悩まされながら、仰向けで寝ていたジュエイクは両腕に力を加え、体を起き上がらせた
腰には毛布が掛けられており、隣にはいっぱいの水が入ったコップが置かれている
「・・・」
何の躊躇もなく、水を一気飲みし、口から流こぼれ落ちる雫を裾で拭き取り、立ち上がった
「あの遺跡でヒルト達から離れて・・それから俺はどうなったんだ?
・・くそ、思い出せない」
右手に炎を宿し、周囲を見渡す
「俺の知っている洞窟じゃない?
ってことは誰かが俺をここに連れてきたのか」
「その様子じゃあ、俺が拾ったことは忘れてそうだな」
「?!」
突然かけられた声の方向へ炎を灯すジェイク
そこには青い短髪に包帯を巻き、紺色の皮のベストと白いシャツを着た青年が立っていた
「アドラ・・なのか?!」
疑心暗鬼でジェイクが青年の名を呼ぶと、その青年は浅葱色の瞳を向け、優しく微笑み、応えた
「元気そうだな、ジェイク」
アドラは左手の指を鳴らす
その瞬間、洞窟の壁に掛けられていた松明に青い炎が灯り、洞窟内は明るく照らされた
「炎の能力・・?
アドラ、お前どういうことなんだよ」
「長い話になる
まぁ、外の空気を吸いながら話そうぜ」
アドラはジェイクに背を向け、岩で造られた人工的な階段を上っていく
「・・・・。」
なんの躊躇もなく、ジェイクはついて行き、階段を上った
上り詰めた階段を終え、開かれている木の扉を通ると、そこは薄暗い洞窟から景色は一変し、星空が広がる夜空と、寂れた古城と人影がない城下町が見えた
「数年前まで、火族が管理していたバレッタ地区だ
けど、もう人が住める場所じゃない。
だからお前を匿うには最適な場所だろ?」
「・・何があったんだよ
バレッタ地区は火族が保有する土地の中でも
数少ない要塞都市があっただろ」
バレッタ地区―――
それは戦闘民族である火族が誇る難攻不落のクエリア城が建てられていた
巨大な川が流れ、クエリア城は断崖絶壁の頂上に建設され、下に広がる城下町はもしもの襲撃を考慮し、数多の罠が仕組まれた上に住宅街を建てていた
暗黒戦争の中、一番安全だと謳われたその地区はジェイクの生まれ故郷でもある
