第12章 炎の意志
ラルザは己の非力さに悔いながら、ヒルトを見つめながら話す
そしてユリエフは治療をしながら少しでも毒を取り除こうとするが、まったく効果がなかった
「心拍数と血圧が上昇、血液の中に毒が染み渡っているせいで全身の筋肉にすでに影響が出ています
これでは3日経つ前に2日程でヒルト君の体は自由を無くします
クライヴ君・・どうしましょう!」
「・・・・」
深く考え込みながらクライヴの眉間にシワが寄りながら
出来れば取りたくない方法を選ぶしかなかった
「ラルザ、お前の力で一時的にヒルトの血液を吸い取れ。
そして毒を体内で浄化させろ」
「お言葉ですがクライヴ様、そんな事をすれば
貴方様の肉体にもっ・・」
「時間がないんだ。
俺はいくらでも回復する
だが、ヒルトは違うだろ」
ヒルトの口から吐かれる息は小さく、猛毒に体が蝕まれる姿を見つめながららラルザは頭を縦に振り、一切の躊躇もなく闇の術を演唱し、全身に紫色の刺青が浮き始める
ヒルトの治癒をするユリエフの手首を掴み、クライヴはヒルトからユリエフを遠ざける
「クライヴ君?
何をするつもりですか?!」
耳を尖らせ、犬歯が赤い唇から長く突き出たラルザがヒルトに近付いていく姿にユリエフは危機感を感じた
それは吸血鬼そのものの肉体となり、ユリエフは初めてラルザの真の姿を目にすふ
対してクライヴは冷静にラルザとヒルトを見つめ、ユリエフが邪魔しないよう手を掴む力を強める
「ラルザの力でヒルトの血液をギリギリまで吸い、血液の中に染み渡る毒をラルザの体内へ移す」
「なっ」
「すぐに解毒出来ないなら、この方法しかない」
「待ってください!
そんな事をすれば貧血を起こして更に不調をきたします」
「その時はユリエフ、お前の力で癒してやれ」
「っ・・ーーーー」
何も言い返せず、ただ立ち尽くすしかないユリエフは
ラルザの牙がヒルトの首を深く噛み付き、毒と血を吸っていくのを黙って見るしかなかった
ただ、聖人だから見えたのか、それともクライヴがあえて見せているのか定かではないが
ラルザの首から全身にかけて闇の鎖が巻かれ、それはクライヴの体に繋がっている
そして鎖は脈を打ちながら毒をラルザとクライヴの体内へ運んでいく
毒はラルザの全身を巡った後、更にクライヴへ移り
2人の力を弱めようとしていっていた
「クライヴ君、まさか貴方とラルザさんで毒を?!」