第12章 炎の意志
「聖人のユリエフや闇堕ちのクライヴは火族として目は離せない危険な存在だ
けどヒルト、お前は更に危険なんだよ
いや、以上なほどに危険すぎる」
ジェイクの言葉にヒルトは蹲りながら必死に見上げて聞き返す
「っ・・俺が・・危険すぎる?!」
「そう。
仲間の危険と知れば必ずヒルトは死地でも飛び込むだろ
それにインドリームとしての力の扱い方も長けてる
本当は〝いつから〟インドリームなんだ?」
「それは・・・」
「言えないだろ?
ヒルト自身、自分が何者なのかわかってないんだ
それなのにここまで意志と夢を持ててるのはおかしいだろ
こんな俺だって自分の出所やインドリームなった状況は知ってる
けどお前は何もないんだ。
まるで空っぽなんだよ」
ジェイクは虫を見るような目でヒルトを見下ろしながら首を絞め上げる
「ぐっ!」
軽々と持ち上げられたヒルトは抵抗する力はなく、無抵抗状態になる
「ジェイク・・やめて・・くれ・・
俺は・・・お前と戦いたくない!」
「あははは!
どれだけお人好しなんだよ、ヒルト!」
ジェイクはヒルトを締め上げながら腹部に拳を当て、衝撃がヒルトを襲う
「お゛えっ」
胃の中の残留物が喉を通って込み上げ、口から唾液と泡と混ざって溢れ出す
そのまま石畳の床に叩きつけられ、しゃがみながら静かにジェイクは話した
「なぁヒルト
もしお前が俺のために犠牲になるっていうなら
ここで死んでくれ」
「ゲホッゲホッ
なんで・・・そんな事・・」
「そんなの、決まってるだろ」
頭部に巻いていたバンダナを外し、ジェイクは額から赤暗く光る呪印を見せつけた
禍々しい呪いの邪気が流れ、周囲の血管が浮き出ている
そしてヒルトはその呪印を見て目を見開く
「その呪印は・・・火族の・・暗殺部隊の・・」
「そう、これは火族の暗殺者の中でも特高勲章クラスに与えられる証であり、誓いもなる呪印。
そして俺は暗殺部隊の1人だ」
火族の特高勲章
それは火族の中でも並外れた新体力をDNAに刻まれた家系に生まれ、そして一夜で千人の命を奪えた者だけが与えられるもの。
火族特有の闘争本能を強く受け継いだ彼等は大いなる戦の為なら命を喜んで投げ出し、必要であれば拷問、詐欺、誘拐などで新たな戦を作り上げる戦闘集団。
「お人好しのヒルトならこれたけ見せてもきっと信じられないだろうから、俺の覚悟を見せてやるよ」