第12章 炎の意志
「夢はある。
けどヒルトみたいな皆が平和になるようなものじゃない」
ジェイクはかつて見せたことない悲しみに溢れた口調で答える
そして炎を右手の平に出現させ、天空に放った
小さな火の玉は天空で消滅し、ヒルトは何をしようとしたいのか理解できず、黙ってジェイクを見つめていた
「ヒルト、さっきお前が見た悪夢はこの街で起こした時間の一部始終であり、見た光景はすべて真実なんだ」
「!
ジェイク、どうして俺が見た悪夢を知ってるんだ?!」
「知ってるさ。
これは運命だからな・・最初から全部仕組まれていたし
この時のための俺だったんだ」
「まってくれよ、運命?
最初から仕組まれていた?
どういう意味なんだ?!」
立ち上がりながら手甲を両手に装着するジェイクを見ながら
ヒルトは僅かに恐怖心から距離を取るために後ずさりをする
「俺が怖いだろ?
そりゃそうだろうな
今ここにいるのはインドリームごっこをしていたジェイクじゃない。
火族として使命を全うするために存在する暗殺者なんだからな」
「ジェイク?
何いってるんだよ・・暗殺者って本気で言ってーーーーー」
ヒルトは最後まで語る事はなかった
なぜなら右肩にジェイクが隠し持っていた短剣が突き刺さり、激痛が生じたからだ
「っ?!」
刺さった短剣の先端に塗られた猛毒はすぐにヒルトの体を蝕み、足の筋肉を麻痺させ、立つ力を奪う
その場で膝をついてしまったヒルトは頭の中が混乱で満たされる
昨日まで共に闘い、信じてきた仲間が敵意を向け、すぐに身体の自由を奪ってきたのだ
抵抗したいと思う気持ちと、仲間に抵抗するのは間違っていると考える気持ちが交差し、正確な判断ができないまま傷口を抑えているなか、すぐ目前にジェイクが立っている事に気づく
「お前をずっと殺す機会を伺って潜伏してたんだ
下手すれば殺す必要はないとも思ってた矢先に
ついに上から殺せと言われた
俺もこの任務に全てを賭けてる
お前が仲間を守るのに全力を尽くすのと同じことさ。
だから、せめて楽に殺してやる」
業火に包まれた手甲を大きく振りかざし、ヒルトの頭部を目掛けて振り下ろすジェイク
「くっ!」
ヒルトは痺れる足に全力を注ぎ、何とか避けて頭部への直撃を避けるが代償として置き去りになっていた左足を犠牲にしてしまった
「あぁぁっ!!」
左足首の骨は無残に骨折し、更なる激痛に襲われる