第11章 破滅の鐘
ヒルトの演説に静まり返っていた民集の中から
盛大な拍手と歓声が周囲を包む
「そうであれば、これからも夢を諦めず、手を取り合いましょう!
インドリーム の力は皆さんの夢のためにあり、夢があって成し遂げれる
どうかこれからも手を取り合い、共に進みましょう!」
右足から一歩下がり、深く頭を下げてヒルトはフランシスの後ろに控えた
それでも民集の歓声と拍手は止まることなく、熱狂に包まれた
その様子を冷静に遠くから見つめていたクライヴに
後方で膝をついて見守るラルザは口を隠しているベールを外し、声をかけた
「ヒルト・クローズには人を統率させるカリスマ性があるのですね」
「・・・そうだな」
静かに言葉を返すクライヴはラルザへ目線をむけることはない
ただじっとインドリームの方へ見つめていた
「俺と出会った時と比べて、ヒルトは変わった」
「変わられた?
それはつまり成長された、ということでしょうか?」
ラルザの問いに、クライヴは首を横に振る
「ただの成長じゃない
急激な成長・・・いや、あれは何かに引き寄せられて開花していくようだ
まるで、かつての俺を見ているような気分だ」
「クライヴ様、それはどういう意味でしょうか?」
「俺は世界を闇に染め、混沌をもたらすために闇の神に造られ、破壊という運命に縛られていた。
意志を持ち、小さな夢すら持っていた俺でも結局は運命から逃げれる事もなく引かれたレールの上を歩くしかなかった
闇に導かれるままに生き、そして堕ちた。」
「・・・」
「ヒルトは自分の夢が人間種や闇堕ち、魔族が隔たりなく皆が夢を持ち、自由に生きることだと言っているが
それだけであそこまであいつは変われるのか?
俺と出会った時の一年前はインドリームの力をまともに使えず、魔力操作や相手の精神世界に入ることだって出来なかった
それなのにここまで変われるのは違和感を感じる」
「クライヴ様はヒルト・クローズを心配されていたのですね
あの場に立たれないのもインドリームの為を思ってのこと。
その御心に感服いたします」
ラルザは深く頭を下げ、平伏する中
クライヴはもたれかけていた建物の壁から離れ、ラルザと向かい合わせになるように膝を曲げ、目線を合わせた
「ラルザ、これからお前に頼みたい事がある」
「はい、何なりと申しつけ下さい
あなた様の求める願いを何でも聞き届けましょう」